赤坂英一の野球丸

2020年7月15日

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ブルペン投手の過酷なストレス

 ジャクソンには2018年オフ、交際していた日本女性との間に生まれた息子がいると伝えられる。女性との関係に亀裂が入り、息子の親権を女性が持つことになったため、弁護士を立てて協議を重ねているという。

 球団に契約解除を申し出た9日深夜、ジャクソンは自身のSNSで「日本で個人的問題に直面し、困っている。弁護士費用がかさみ、チームを離れたことは大きな痛手だ」などと綴っていた(現在は閲覧不能)。その翌日に新幹線で広島へ向かったのも、相手の女性や息子に会うためだったのかもしれない。

 ただし、この揉め事をそのまま大麻に結びつけるのはいささか短絡的ではないか、と私は思う。ジャクソンを逮捕したのが広島県警だったということは、そもそもカープに在籍していたころから大麻の所持・使用に関する捜査が進められていたということだろう。

 女性や息子の問題が深刻化したのは、広島がジャクソンとの契約を打ち切った2018年以降。時系列を振り返ると、広島県警はその前に捜査に乗り出しているのだから、ジャクソンが私生活の悩みだけで大麻に手を出したと考えるのは無理がある。

 そこで思い出されるのが、来日1年目の2016年からジャクソンが地元の歓楽街・流川や、遠征先の東京・六本木で痛飲していたという評判だ。チームメートと飲んでいる席では概ね明るく騒いでいたようだが、ときには逆上して暴れ出すこともあったと聞く。理由や原因はわからない。

 ただ、ジャクソンのような中継ぎ投手が、大変ストレスの溜まるポジションであることは確か。先に紹介したジャクソン自身の怒りのセリフにもあったように、中継ぎは抑えて当たり前、打たれて試合を引っ繰り返されでもしたら、たちまち報道陣に囲まれて原因を追及される。

 近代野球では、リードした試合での中継ぎはセットアッパーと呼ばれ、球団はもちろんファンやマスコミにも高く評価されている。とはいえ、先発のエースや守護神と呼ばれるクローザーと同等の地位を得たかとなると、やはり下だと言わざるを得ない。

 しかも、143試合もあるシーズン中、ほぼ全試合にベンチ入りして、登板試合数は先発やクローザーよりはるかに多い60~70試合に上る。ブルペンで準備しなければならない試合はそれ以上で、展開次第で同点やビハインドでも登板を命じられるのだ。

 こういう立場に置かれたリリーフ投手は、大酒飲みが多い。私と同世代のある投手は、厳しい場面で登板した夜は、バーボン・ウイスキーを「ボトル半分飲んでもまだ酔えない」と言っていた。そういう生活を送っていたからか、故障も多く、引退するのも早かった。

 その後輩のセットアッパーは、シーズン中こそ酒を控えていたが、オフには昼過ぎから飲み始め、盛り場で朝を迎えることも珍しくなかった。そんなタイプが、豪快でいかにもプロ野球選手らしい、と持てはやされた時代でもある。当時は、彼らに付き合うわれわれ記者も大変だった。

 もちろん、ジャクソンがアルコールだけでなく、大麻に手を出したことに同情の余地はない。仕事上のストレスもまったく言い訳にはならない。100%、本人が悪い。

 しかし、プロの投手としてだけ評価すれば、彼は大変優秀なリリーフ投手だった。そして、いい成績を収めれば収めるほど、独特で過酷なストレスが溜まるのが、このリリーフ投手というポジションなのだ。かつてジャクソンを応援したことのある広島やロッテのファンは、そのことだけでも、頭の片隅にとどめておいてほしいと思う。

  
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