政府は新型コロナウイルスにより経済的な影響を受けている学生への支援を進め、独自に授業料減免を行った大学等への助成も行う。意欲ある学生の学びの機会が失われないよう、今後も早急な対応が求められる。
ただ、こうした緊急支援とは異なり、今後将来にわたり現在の形のまま全国に大学を残して運営し、そこに税金を投入するとのあり方は、国民的な議論が必要だ。
1990年には約200万人いた18歳人口は、2020年には約116万人と、約4割減少した。一方で、大学の総数は507から786(19年度)へと、約5割増加している(下図)。人口減少の局面にありながら、いまだに大学は「増殖」している。
国立大学は、各都道府県に1つ以上設置され、現在86校ある。この数は08年以降変わっておらず、定員数もこの15年で約1%しか減少していない。
他方、〝増殖中〟なのが公立大学だ。1989年には39校だったが、2006年には国立大の数を上回り、現在全国に93と、一部統合はあったがこの30年で2倍以上に増えた。公立大学は自治体が設置し、学生からの授業料のほか、地方公共団体から運営費交付金が拠出される。原資が地方交付税のため、直接的にはその自治体の懐が痛まないことから、最近では定員割れの私立大学が公立化し、結果的に志願倍率が高まる事例が相次いでいる。
ある大学関係者は「公立大学は自治体が設置し、地方交付税は総務省が管理する。文部科学省としては国立大の設置と違い口出しすることもないので、結果的に数ばかり増えたのでは」と指摘する。
それだけではない。私立大学も新設が進む。だが、約600ある大学のうち、約3割が定員割れしている。また赤字経営の大学も約4割にのぼる。私立大の収入は学生からの授業料が主だが、私学助成金という形で国から補助金が支給され、総額は毎年約3000億円。定員割れ大学の方が補助金への依存度が高い。経営維持のために入学のレベルを下げてまで学生を集め、一方で優秀な教員が集まりにくくなるなど、教育の質の低下も懸念される。
20年後の地方大に目立つ〝空き〟
「1県1大学」固執の限界
20年後には、日本の18歳人口は88万人にまで減少する。文科省が18年に推計した40年度の入学定員充足率は、特に地方部で大きく低下する試算だ。
国公私の入学者の割合は青森、岩手、秋田の東北3県をはじめ、新潟、徳島では70%を切っている(下表)。例えば秋田県では、国立70.7%、公立67.6%。私立に至っては56.5%と、充足率が約半分の割合になる。