2024年11月25日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年7月30日

 岩波の本の執筆者に推薦状を書いてもらえば、紹介があることになる。銘柄大学の学生であれば、より多くの執筆者と知り合う機会が多いが、岩波の執筆者は多彩であって、やる気のある学生なら、知人のつてを頼って紹介状を書いてもらうことは可能だろう。それは、見知らぬ著者を口説き落として執筆してもらう能力に近いものがある。岩波に依頼されれば喜んで書く著者は多いだろうから、そんな能力は要らないかもしれないが、学生の能力と適性とやる気の指標にはなる。

 他にも、もっと多彩な方法で、企業にとって手間がかからず、学生の能力を知る方法があるはずだ。折角、岩波という有名出版社が考えたのに、コネはいけないと言って潰そうとしたのは残念だ。

ハローワークに
マッチングできるか

 そもそも、ハローワークに、企業の本当の希望、学生の本当の適性を知る能力があるのだろうか。多くの企業は、ハローワークよりも、新規採用でなければ、取引先、下請け、元請け、同業者、友人、知人、それらの関係者から人を探す。仕事の能力を確実に知っている人から選べるからだ。ハローワークにその能力があるとは思えない。

 ハローワークの職員は役人だが、本来、役人にきちんとできる仕事がある。規制すること、チェックすることである。ところがハローワークは、斡旋するだけで、求人票の記載事項が正しいかどうかチェックしていない。ブラック企業の排除もしていない。

 確かに、何がブラック企業かの判定が曖昧なままで、公権力がある企業をブラック企業だと決めつけるのは問題かもしれない。しかし、多くの大学はしているようだ。私立大学なら、担当者がブラックだと思えばブラックだと言い張ってしまえばそれでかまわないと私は思う。

 しかし、公権力でも、求人票の記述と実態に違いがあれば、それは違反のはずである。500の大学内ハローワークが、このような企業をブラックリストに載せれば、かなりの牽制になる。

 私は、ときどき、日本の役人は、本来、役人がするべき仕事をできない人たちだと思うことがある。もちろん、原発を正しく規制するのは難しいが、これぐらいならできるだろうと思うのだ。企業の本当の希望、学生の本当の適性を知ることなど諦めて、虚偽記載の取り締まりだけでもきちんとした方が良いのではないか。

 

◆WEDGE2012年7月号より

 

 

 

 

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