2022年12月4日(日)

From NY

2020年7月29日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

オフィスの維持はどうなっていくのか

 一方オフィス用の物件は、どうなのだろう。テレワークでも業務が成り立っていくことが証明された企業経営者たちは、高い家賃を払ってマンハッタンにオフィスを維持し続けるだろうか。

 「在宅勤務は、90年代からIBMなどが試してみていました。当時はやはり集中力に欠けるなど、効率が悪いとされていたんです。だが今回は選択のない状況で人々もそんな悠長なことは言っていられず、中には毎日15時間も仕事をしたという話も聞きました。でも人間、そんな状態は長く続けていけるものではありません」

 筆者も過去30年間、自宅兼オフィスで仕事をし続けてきたが、通勤の必要がないなど楽な部分もある反面、私生活と仕事の時間のけじめをつけることは難しい。

 「また人間は、他人との接触が必要な生き物です。オフィスに行くことで、人々とのコミュニケーションを通して学ぶものは大きい。だから経費節減でマンハッタンから引き上げることはあっても、オフィススペースそのもの失くしてしまう企業というのは、ほとんどないだろうと思っています」

苦戦する商業用物件のオーナーたち

 もっとも大きな試練に見舞われているのは、商業用物件のオーナーたちだろうとスティール氏。マンハッタンではパンデミック以前から、不動産家賃の高騰に耐え切れずに老舗のデパートメントストアが次々と閉店していった。ロード・アンド・テイラー、ヘンリ・ベンデル、バーニーズ、ニーマン・マーカス、そしてつい先日日本の民事再生法にあたるチャプター11をしたブルックス・ブラザーズ。いずれも伝統ある、有名高級店である。

 「(昨年開店したばかりのショッピングモール)ハドソンヤーズは、ニーマン・マーカスが売りだった。多くの小売店テナントたちは、ニーマン・マーカスが入っていたから入ったんだと思います」

 こうした一等地に巨大なスペースを占領していた大手ブランド企業が破綻し、いったい誰がその空間を埋めるのか。

 「大きな予算を持った資本家たちが、商業ビルを丸ごと叩き値で買い取ろうと交渉してくることもあります。でもそもそもこうした大きな物件のオーナーは、経験豊かな投資家たちです。そう簡単に、安易なバーゲンには応じないでしょう」

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