2022年12月10日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2020年8月12日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

中国宇宙開発の主体

 宇宙開発に携わる主体を見ても、中国の宇宙開発が軍事と密接に関わっていることが理解できる。その一つが、国営企業の中国航天科技集団有限公司である。中国航天科技集団有限公司は、1956年10月8日、中国初のミサイル研究機関として国防部第五研究院という名称で成立され、中国の宇宙事業が開始された。同研究院は、1964年11月に第7機械工業部、1982年4月に航天工業部、1988年7月に航空航天工業部、1993年6月に中国航空工業総公司と中国航天工業総公司に分割された。「公司」という名称がついているが、国家航空局という政府機関の看板も有しており、同企業の社長は国家航天局局長を兼任した。

 1997年7月1日、国務院は中国航天科技集団公司を成立させ、社長を任命した。2013年4月、中国共産党中央および国務院は、中国航天科技集団公司に理事会を設置して理事長を任命し、同社が中国共産党の直接の管理を受けていることを示している。党中央が管理するということは、宇宙開発における軍事部門と民間部門の分離が形式的なものであることを示唆する。同社は、2017年12月8日、党中央および国務院による全民所有制企業(国営企業)の企業制度改革の決定を受けて中国航天科技集団有限公司となった。しかし、その後も中国共産党中央が、同企業の理事長および社長を指名し続けている。

 同社は、「長征」シリーズ運搬ロケット、有人宇宙船、月面探査機、「北斗」測位航法援助衛星、科学探査・技術試験衛星、気象衛星、対地観測衛星、通信衛星といった商用衛星の他、DF-41大陸間弾道ミサイル(ICBM)等の戦略核兵器、通常弾頭地対地ミサイル、ミサイル防空システム、無人機等を製造している。同社は、中国で唯一の大陸間弾道ミサイルの研究開発製造組織であり、液体燃料および固体燃料、陸上発射型および潜水艦発射型、固定発射および機動発射、中距離から大陸間弾道ミサイルといった多種のミサイルを製造している。また、その他の兵器として、太陽エネルギー無人機、CH-5大型長距離無人機、地面効果エアクッション複合機、CX-1超音速巡航ミサイル、CH-805高速ステルス無人機、CH-804近距離車載無人機等を開発している。

 一方の中国人民解放軍の中で宇宙を担当するのは、空軍とロケット軍、さらに戦略支援部隊である。戦略支援部隊は、2015年12月31日に設立され、その人員は17万5000名と推定される。戦略支援部隊は、人民解放軍の宇宙およびサイバー空間における能力について、中央軍事委員会に報告する義務を負っているとされる。その主要任務は、宇宙、深宇宙、ネットワーク、サイバー空間における優勢を確保し、人民解放軍の作戦を有利に進めることである。その具体的任務は、情報、技術偵察、電子戦、サイバー戦、心理戦における特殊作戦、整備補給(目標の捜索探知追尾、目標情報の伝達を含む)、日常的な航法援助活動、「北斗」及び宇宙情報収集手段の管理業務、サイバー攻撃/防御、ネットワーク防御とされる。

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