2024年11月22日(金)

安保激変

2012年7月6日

 オスプレイは長い滑走路を必要とせず、高い輸送能力を誇る。完全武装の兵士24名を輸送できるため、海兵隊員や空軍特殊部隊の輸送に特に有用である。オスプレイはベトナム戦争時代のCH-46ヘリコプターと順次交代していくが、その最高速度は時速550キロを超え、CH-46の約2倍である。また、航続距離は空中給油を併用すれば、最大で3700キロとなる。

 だが、オスプレイは開発段階から事故が目立ち、「未亡人製造機」という悪名をはせている。1991年から2000年の間に4機のオスプレイが試験飛行で墜落し、30名の命を奪った。01年から05年の間に改良が重ねられ、現行の「オスプレイ・マークII」が開発された。このマークIIは07年にイラクに、09年にはアフガニスタンでの実戦に投入され、11年には殺害されたオサマ・ビンラディンの遺体を洋上の空母に搬送している。

 昨年の時点で、海兵隊はオスプレイの事故率は飛行10万時間中2件で、海兵隊の他の航空機の事故率(飛行10万時間中2.6件)を下回っていると説明していた。だが、この数字に関しては、「A級」の深刻な事故(死亡事故または200万ドル以上の損害額)しか含めておらず、空軍仕様機の事故も含まれていないという指摘がある。

開発時の最大の課題はエンジン

 オスプレイ開発時の最大の課題は、エンジンであった。オスプレイは海兵隊が中心となって設計したため、強襲揚陸艦に搭載することを前提としている。できるだけ多くのオスプレイを強襲揚陸艦に搭載するため、機体は極限まで小さくなり、回転翼も折りたたみ式となった。

 回転翼は当初の設計よりも1.5メートル短くなったため、搭載するエンジンには6200馬力という非常に高い動力が求められることになった。海兵隊が保有する最大のCH-53ヘリの動力が4400馬力であることからみても、エンジンにかなりの負担がかかることがわかる。また、オスプレイはその複雑な機体のデザインのため、油圧系統も入り組んだものとなっている。

米海兵隊に必要不可欠なオスプレイ

 オスプレイの機体に問題があるのかどうか、軍事機密の壁に阻まれその真実を知ることは容易ではない。しかし、新しい軍用機の導入に事故はつきものであり、高い事故率はオスプレイに限ったことではない。垂直離発着型戦闘機ハリヤーの事故率も当初は非常に高いものであった。

 また、新しい軍用機には訓練のプログラムの向上が不可欠であるが、とりわけ、エンジンを上昇から前進に切り替える際の風向きが事故につながる可能性が指摘されているので、オスプレイのパイロット訓練にもまだまだ改善の余地があろう。軍用機の運用は、失敗を重ねてより安全なものになるのである。


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