野田佳彦総理大臣は、米国東部夏時間4月29日(日)にワシントンDCに到着した。30日朝にアーリントン国立墓地で献花した後、午前から昼食にかけてバラク・オバマ大統領と首脳会談を行った。翌5月1日には帰国の途につく、という慌しい日程となった。
ヒット数18件 野田総理への関心は…
全体的には、ワシントンでの野田総理の訪米の注目度は非常に低かった。本稿を書くにあたり、事前の報道振りを調べようと思い、29日夜にワシントン・ポスト紙の過去2カ月の記事を「Noda」で検索してみた。ヒットしたのはわずか18件。訪米そのものについて扱った記事は1つだけで、それも「愚かさの度合いは少ない(Less Loopiness)」というタイトルのポジティブとは言いがたい記事。そのほかは原発再稼動を巡る議論や、消費税引き上げを巡る国内の厳しい政治情勢、あるいは小沢一郎元民主党代表の無罪判決に関するものばかりであった。
なぜか。そもそも今回の訪米に対する期待値は非常に低かった。野田政権の寿命は短いというのがワシントンの日本専門家では概ね共通の認識で、このため、ただでさえ消費税引き上げに自らの政治力を使い果たしている野田総理の訪米が日米関係上の大きな懸案の決定的打開に結びつくようなものになるとは誰も思っていなかったようだ。
また、当初期待されていた、野田総理による日本のTPP参加表明が叶わないことが確実になってからは、安全保障の分野で、鳩山政権以降、迷走を続けてきた沖縄の米海兵隊普天間飛行場の移設問題について一定の結論を出すことができるか否かに焦点が移った。
しかし、これも、4月25日に発表予定だった安全保障協議会(2プラス2)共同声明が米議会の有力な上院議員3名がパネッタ国防長官に対して連名で3抗議文書を送っただけで、一時は発表そのものが危ぶまれる事態に陥った。沖縄に駐留する米海兵隊のグアム移転の規模や、海外で初の日米共同演習場建設などについて触れたこの声明は、最終的には日本時間の4月27日(米国東部夏時間の26日夕方)に発表され、最悪の事態は免れたが、直前の二転三転があったため、発表そのもののインパクトは弱くなってしまった。
よく分からなかった訪米目的
今回の総理訪米・日米首脳会談についての評価は難しい。首脳会談後の共同記者会見で発表された共同声明には、(1)同盟の深化、(2)経済・通商での関係強化、(3)地球規模問題(サイバー、宇宙、エネルギー、核の安全保障など)でのパートナーシップ、(4)共通の価値観に基づく日米関係のビジョンの確認、といった前向きなアジェンダが盛り込まれ、一応の結果は残った。特に、鳩山政権以降迷走を続け、「日米中は正三角形」という発言で物議を醸した議員もいる民主党政権が米政府との間でこのような共同声明を発表し、日米同盟はアジア太平洋の礎であり、日米関係は日本の外交・安保政策の要諦であることを確認したこと自体は、非常に大きな価値がある。