世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年8月24日

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 8月11日、民主党のバイデン大統領候補は、副大統領候補としてカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)を指名した。正式には、8月17日から始まる民主党大会で決定される。

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 バイデンがハリスを副大統領に指名したことに関して、米ワシントン・ポスト紙のコラムニストであるジェニファー・ルービンが、8月12日付の同紙に、「カマラ・ハリス上院議員は、ジョー・バイデンの最も大胆で、かつ最も適格な抜擢であった」との論説を寄せ、今回のバイデンの選択を称賛している。

 確かに、この論説が言うように、バイデンの選択は、大胆で的確な指名であったと思われる。バイデン氏は既に世論調査でトランプ大統領をリードしているが、ハリスを副大統領に選んだことで、バイデンが次期米大統領に選ばれる蓋然性はさらに高くなったと思われる。

 カマラ・ハリスは有能で、攻撃力がある。彼女は、民主党の大統領候補をバイデンと争った仲でもある。その民主党の大統領候補予備選の第1回討論会で、カマラ・ハリスは、人種隔離政策をなくすために行われた生徒のバス通学について、批判的態度をとったバイデンを攻撃した。バイデンがしどろもどろになる場面を作り出したが、カマラ・ハリスの有能さが全米に知れわたる機会になった。バイデンはいわば恥をかかされたわけで、そのバイデンがカマラ・ハリスを副大統領に指名することはないだろうと思われていたが、バイデンはトランプと違い、心が広い。そういう経験を乗り越えて指名したことは評価できる。

 実は、バイデンとハリスは大統領候補を争った仲という反面、意外な親密な関係がある。民主党内でも左派中道で考え方が似ているという共通項以上に、二人の間を結んだのは、2015年に脳腫瘍でなくなったバイデンの愛すべき長男ボウの存在である。ハリスがカリフォルニア州の司法長官であった時、ボウ・バイデンはデラウェア州の司法長官だった。そこで親交が深まり、バイデンが初めてハリスに会ったのも、息子を通じてだったと言う。8月11日のバイデンのハリス副大統領候補指名発表の翌日、二人は、デラウェア州の高校の体育館で早速そろって演説した。ハリスがボウと父バイデンの愛情関係に触れると、バイデンは感極まった表情をした。

 バイデンは女性を副大統領候補にすると約束していたが、黒人を副大統領候補にするとは約束していなかった。これで黒人票がバイデン=ハリスに多く投ぜられることは確実である。カマラ・ハリスは、インド人の母と、ジャマイカの黒人の父の移民の子として育った。その意味では、アジア系、南米系、アフリカ系を含め多くの移民の票も集めよう。

 バイデンは77歳と高齢であり、時折認知症ではないかと疑われるような発言もする。もしバイデンに健康上の問題があったような場合、副大統領が大統領になる。そういうことを考えても、有能な副大統領は重要であり、今回のハリス抜擢はその意味でも評価できる。また、その場合、米国史上、初の女性大統領にもなり得る。

 なお、トランプはカマラ・ハリスを大嫌いである。バイデンがハリスを副大統領候補に起用したことは、トランプ大統領にとっては、非常にやりにくい選挙となったことは間違いない。

  
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