2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2020年9月28日

相続が発生するたびに「たたむ」

Q 空き家や住む人がいなくなった住宅の相続との関連では。

A 近年、空き家バンクなどの制度を設けて、空き家対策に取り組む市町村も多いが、甚大な被害が想定される災害ハザードエリアの空き家でも購入者を募集しているところもある。空き家対策として、どんな立地でもとにかく空き家が流通できればよいという方向性も見直すべきである。甚大な被害が想定される災害ハザードエリアの住宅については、相続が発生するたびに「たたむ」ことを視野に、解体支援策の充実も必要だ。

 特に、人口減少・高齢化が進展し、甚大な被害が想定される災害ハザードエリアでは、安全な避難所の確保といった減災の取り組みを続けながら、長期的な対応策として、今後、相続の発生を機に、グリーンインフラなど新たな土地利用へと転換するための支援策も考えざるを得ない時期に突入しているのではないか。

Q 災害リスクを減らすための今後の政策について。

A これまでも都市計画と住宅政策を連携させるべきということはずっと問題視されてきたが、結局、実現してこなかった。なぜなら、開発規制を強化したり、住宅の立地を限定する形の住宅政策は、地域経済や人口対策に影響すると、地主や議員、住宅に関連する業界からの反対が大きいからである。

 しかし、長期的に見ると、実際に甚大な被害がおきた場合に必要となる復旧・復興コストのことが考えられておらず、結果的に、将来世代にこうした負担を押し付けていることに他ならない。これまでのように、「開発規制が緩い方」「地価が安い方」「未利用地がある方」へと人口や開発需要が流れ、甚大な被害が想定される災害ハザードエリアであっても住宅がつくり続けられるという悪循環は早急に断ち切らなければならない。

のざわ・ちえ 大阪大学大学院修了後、民間企業の勤務を経て、東京大学大学院にて博士(工学)取得。東洋大学理工学部建築学科准教授・教授を経て、20年4月より明治大学政治経済学部政治学科教授(都市政策・都市行政)。著書は『老いた家 衰えぬ街~住まい終活する』(講談社現代新書、2018年)など。国土交通省の社会資本整備審議会住宅分科会の委員を務める。兵庫県生まれ。

  
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