「経済は共和党」との通説も、必ずしも現実に即したものではない
この点どちらかと言えば、米大統領選挙のたびごとに共和党路線への期待と傾斜を鮮明にしてきたわが国財界とは一線を画している。
「経済は共和党」との通説も、必ずしも現実に即したものではない。第2次大戦後の米国経済を振り返ってみても、ジョンソン、クリントン(2期目)、オバマ(2期目)各民主党政権下での成長ぶりは、多くの専門家の間でも高く評価されてきた。戦後の共和党政権で評判になったのは、“レガノミックス”で知られたレーガン政権(1期目)程度であり、21世紀に入り、トランプ現政権の総合的実績についても、大幅減税による景気押上げ効果があった一方、経済格差拡大などのマイナス面もあり、現段階では評価が分かれている状態だ。
ただ、来年以降の米国経済の行方について、上記のようなウォール街における「バイデン期待論」の多くは、バイデン勝利のみならず、民主党が下院での議席増に加え、上院でも多数奪回が実現することを前提としたものだ。しかし、もし、苦戦が伝えられる共和党が上院で現状(共和53人、民主47人)を保持するか、辛うじて過半数を死守する結果となった場合、議会の“股裂き状態”が現出するだけに、バイデン新政権の経済政策が思い通り実現できるかどうか先行き不透明となる。
米議会の専門家の間では、上院の明暗は大統領選の結果次第として、もしトランプ大統領が大差で敗退した場合、共和党は上院も民主党に多数支配を奪われ、小差の場合は過半数議席を維持できる―とのリンケージ論まで出ている。
その大統領選の最新情勢だが、NBC News(10月15日)によると、全米有権者を対象とした世論調査では、「バイデン支持」50.1%、「トランプ支持」41.2%で、バイデン氏が9%以上のリードを保っている。
翌16日のCNN最新世論調査では「バイデン支持」53.1%に対し、「トランプ支持」42%で、バイデン氏のリードは11%に開いている。
ただ、米大統領選では、全米得票数ではなく州ごとに割り当てられた選挙人数の合計獲得数で勝敗が決まる。中でも今回は、明暗を分ける最重要州として注視されているのが、接戦が続くフロリダ、ペンシルバニア、ミシガン、ウイスコンシン、アリゾナ、ノースカロライナ6州の趨勢だ。
ニューヨークタイムズ紙が16日までに各世論調査結果をまとめた総合評価によると、バイデン候補がフロリダ州で4%、ペンシルバニア州で8%、ミシガン州で9%、ウイスコンシン州で9%、アリゾナ州で5%、ノースカロライナ州で3%と、いずれの州でもトランプ氏をリードしている。
また最近、選挙人獲得レースに特化した調査ウェブとして脚光を浴び始めた「270towin.com」の分析結果によると、当選には選挙人270人以上の獲得が必要だが、16日時点で、バイデン氏はすでに257人に達しているのに対し、トランプ氏は132人にとどまっている。数字の上では、バイデン氏にとっては11月3日の投票日までにあと13人のみの選挙人を獲得するだけですむことになる。
これに対し、窮地に追い込まれたトランプ氏が再選を果たすためには、まだ138人の選挙人を必要しており、このため「270towin.com」は「トランプ氏はテキサス、フロリダ、ペンシルバニア、オハイオ、ジョージア、ノースカロライナの6州すべてで勝利することが絶対条件」と分析している。
いずれにしても、トランプ氏の再選への道は一層厳しくなりつつある。
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