世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年12月3日

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 11月11日、全人代常務委員会は、香港の中国による統治を否認しその他安全保障に違反する議員の資格を香港政府は剥奪出来ると決定し、この決定を受けて、香港立法会の4人の民主派の立法会議員が、その議席を剥奪された。4人は、7月に次回の立法会選挙(9月に予定されていたが新型コロナを理由に延期)への立候補資格を剥奪されていた。今回の議席剥奪に抗議して他の15人の民主派議員が辞職した。その他に2人が選挙の延期に抗議しており、香港立法会は野党不在となった。これは「一国二制度」の崩壊をさらに進める事態である。

Paha_L / ronniechua / iStock / Getty Images Plus

 11月12日、外相ドミニック・ラーブ外相は駐英中国大使を招致し「選挙で選ばれた民主派の立法会議員を恣意的に排除する中国の決定は英中共同宣言の下における香港の高度な自治と自由に対する更なる攻撃である」と抗議した。英国が共同宣言の違反で中国に抗議するのは1997年の香港返還以来3度目であるらしい。中国外交部駐香港公署は内政干渉を警告するとともに、この措置は野党議員に立法会のハイジャックを止めさせる「正しい薬」だと述べたという。

 英国の抗議で事態が覆ることはないが、外交では筋を通すことが大切であり、「一国二制度」は既に崩壊したとはいえ、今後も起こり得る共同宣言違反の事例にはその都度抗議を続ける必要がある。英国の議会には人権侵害に対しビザ発給禁止や資産凍結などを科す英国版マグニツキー法を発動して、キャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官を含む中国の当局者に制裁を発動することを要求する声もある。

 中国は香港国家安全維持法を強引に導入することに成功し、諸外国にさしたることは出来ないと計算の上で行動しているに違いない。香港住民および諸外国の批判に晒され、街頭では公然とした抗議活動(中国当局に言わせれば「反逆」)が起きる事態に直面して、中国は香港の「植民地化」に乗り出したらしい。2047年の本土への統合までに何が起こるか分からない。キャリー・ラムは、香港に認められているのは「全面的な自治ではない」「香港に三権分立はない」と語ったこともあるから、司法制度に手をつけることがあるかも知れない。

 そのような事態に直面して「西側」の諸国にとっての憂鬱は、香港の住民のために、特に共産党の支配に耐えかねる住民のために何が出来るのかにある。香港の高度の自治と自由を要求し続けることは当然としても、そのことが彼らへの手助けとなるようには思えない。香港が民主化することに希望を抱いている香港住民は殆どいないらしい。また、民主化の運動を主導する人達をトラブルメーカーとして敵視する住民も少なくないという。民主化運動も今や抑え込まれている。西側諸国にできることで、香港住民の利益になることがあるとすれば、それは脱出を希望する香港人の移住を受け入れることだと思われる。

 カナダのメンディチーノ移民相は、11月12日、香港の若者がカナダで就労、勉学し居住する機会を拡大すると発表した。例えば、過去5年以内に大学教育を終えた若者に就労許可申請を認め、その後一定の条件で永住権の取得に門戸を開く。これは香港で続く先行き不確実な状況を考慮して若者の希望と願望に応える措置だとメンディチーノは述べているが、ブリティッシュ・コロンビア州にある香港人コミュニティーの働き掛けもあっての措置ではないかと想像される。同コミュニティーの活動家が、脱出する香港人を保護すべきことを訴え、「英国と日本に比べてカナダは未だ強力な反応を示していない」と述べたと6月末に地元紙に報じられたことがある。カナダはHuaweiの孟晩舟CFOを逮捕したため、報復として中国にカナダ人2人を人質に取られている。香港には30万人のカナダ人が居住する。従って、リスクはあるが、それを承知で今回の措置に踏み切ったことは称賛に値しよう。 
                      
  
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