田部康喜のTV読本

2020年11月26日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Prostock-Studio/gettyimages)

 「恋する母たち」(TBS・金曜午後10時)は、「恋愛の教祖」と呼ばれる柴門ふみの漫画を原作に、「ラブストーリーの名手」である脚本家の大石静が放った傑作である。

 名門中高に通う同級生の息子を持つ、木村佳乃と吉田羊、仲里依紗が不倫に堕ちる。それぞれの相手は、小泉孝太郎と磯村勇斗、阿部サダヲの実力派俳優である。

 物語は、夫が失踪後ひとりで不動産屋のパートをしながら息子を育てる、石渡杏(木村佳乃)と、キャリアウーマンで夫が小説家という林優子(吉田羊)、夫が敏腕弁護士で裕福な蒲原まり(仲里依紗)という三者三様の家庭が舞台である。

 三人の母親たちを軸として、その夫と不倫に堕ちた相手、息子たちのストーリーが巧みに絡み合って、ドラマは進展していく。場面転換もスピーディーで飽きさせない。大石静の脚本の妙である。

 大石静の最近の大ヒットドラマには、「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS・2018年)がある。若年性アルツハイマー病によって、記憶が失われていく、女医役の戸田恵梨香と出会い結婚することによって、元小説家役のムロツヨシが創作意欲を取り取り戻す物語である。病気が進行して周囲に迷惑がかかることを恐れた、戸田恵梨香は海辺の診察所に身をゆだねる。妻を探し出したムロツヨシが、海辺にすわって、すっかり記憶を失った彼女に自作を朗読する。その一瞬だけ、戸田恵梨香は元の妻に戻る。

 今回のドラマは、不倫を描きながらも「大恋愛」の純愛に通底するものを感じるのが正しかどうかは、物語の幕が下りるときを待たなければならないのだろうか。そうではなさそうだ。

 第5話「恋の代償を払う時」(11月20日)に至って、母親たちの不倫は家庭にほころびをもたらす事態を迎えようとしてきた。

 優子(吉田)の夫・シゲオ(矢作兼)が不在だった。地元の与論島にフリースクールを設立する準備にでかけていたのだった。不倫相手の部下の赤坂剛(磯村)が乗用車でマンションに乗り付けたので、外に出る。日ごろかけていた眼鏡をはずして熱烈な口づけをする。そのとき、シゲオが戻ってきて目撃される。

シゲオ 眼鏡をかけなさい。

赤坂  優子さんを愛しています。離婚してください。

 シゲオは優子を近所の居酒屋に連れていき、ビールを注ぐ。

シゲオ 思いっきり、君のタイプだよな。そうすると、君はフェロモンを大量に出す。メスとして貪欲だからな。僕は君の理解者だからよくわかる。ただ、理解者はいつまでたっても恋しいと思われない。大介を連れて、僕は与論に行くよ。君は仕事のために東京に残れ。それがいい。

優子  あなたの判断に任せます。

シゲオ そうでなくとも、君は仕事をとったはずだ。

 翌日、優子は部下の赤坂(磯村)を会議室に呼び込んで、こう告げるのだった。

優子 一度きちんといわなければならないと思っていたんだけど。あなたとはやめなければならない。もうどうにもならない。楽しかった。一生忘れない。

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