2022年12月10日(土)

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2020年12月23日

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小川 聡 (おがわ・さとし)

読売新聞東京本社編集局政治部次長

1971年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、読売新聞に入社。ワシントン特派員、政治部外交・安全保障担当デスク、アメリカ総局長などを歴任。著書に『領土喪失の悪夢』(新潮新書、共著)、『トランプ ロシアゲートの虚実』(文春新書、共著)など。
 

 中国の通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)は、日米などの大学に寄付や共同研究を呼びかけ、技術を吸収したうえで、世界各国に高速・大容量の通信規格「5G」のネットワークを安価に提供している。

 今日の世界は、多くのモノがインターネットとつながっている。その血管とも言える5Gネットワークをコントロールすることで、中国は、情報を抜き取る「バックドア」や、システム自体を停止させる「キルスイッチ」などを自在に発動することができるとされる。中国製の5Gネットワークを受け入れた国は、安全保障上のリスクを抱え込むことになるのだ。

 米国は18年頃から、中国の取り組みに対抗するため、経済安保の対策を次々と打ち出してきた。外国から25万㌦を超える資金を受け入れた場合の政府への報告義務、エネルギー省などと契約する関係者は外国の人材招致計画への参加禁止、留学生へのビザ発給の厳格化─などの規制を導入した。司法省は20年1月、中国湖北省の武漢理工大で千人計画に参加していた事実を隠していたハーバード大学の教授を訴追した。

 輸出管理改革法を制定し、「バイオテクノロジー」「ロボティクス」「極超音速」など14の新興技術に関する輸出規制も厳格化しようとしている。19年度国防権限法では、ファーウェイや「中興通訊」(ZTE)など中国製品の通信関連製品からの排除も決めた。20年8月には中国IT企業5社の機器やサービスを使う企業と米政府の取引を禁止とする規則も施行した。

 中国の国家情報法が中国企業に捜査や情報収集活動への「支持と協力」を義務づけていることなどから、刑事事件にできるような明確な証拠がなくても安全保障上の懸念としてリスクを除去する「ゼロリスク」の姿勢で対処している。

腰が定まらない日本の対中姿勢
明確な意思を示せ

 日本も遅ればせながら、経済安保に取り組み始めている。外国為替及び外国貿易法(外為法)を19年に改正し、外国資本が安全保障上重要な上場企業の「発行済み株式か議決権の1%以上」を取得する際、国への事前届け出を義務づけた(20年5月施行)。経済安保の観点から行う事前審査を拡大する狙いがある。

 20年4月には、内閣官房の国家安全保障局に経済安保の司令塔となる「経済班」を新設した。機微技術、投資、輸出などの管理、留学生や技術者の受け入れに関する規制などの強化に取り組む方針だ。安全保障上重要な施設の周辺における土地利用の規制に向けた検討も動き出している。

 ただ、日米の取り組みには、本質的な違いがある。米政府は、中国を米国主導の国際秩序に対抗して自国優位の国際情勢を作り出そうとしている「修正主義勢力」と名指しし、対抗しようとしているのに対し、日本の対中姿勢はそこまで腰が定まっていない。

 ファーウェイ排除からも、日米の温度差を感じ取ることができる。米政府はファーウェイなどを排除する際、企業名を明示し、日本を含めた各国の企業に米政府と中国企業のどちらと取引をするのか「踏み絵」を迫っている。

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