保守系紙は辞職促す
こうした中でとりざたされているのは、大統領辞職の可能性だ。
保守系で共和党に同情的な米紙、ウォールストリート・ジャーナルは7日づけの紙面で、それをうながす社説を掲載した。
この社説は、憲法修正25条による職務停止について、大統領がバイデン氏の勝利を認めたことに言及、「これ以上憲法に反する行動はとらないだろう」として、その無意味さを指摘。弾劾については、時間的な余裕がないこと、それによって大統領が解職された場合、怨念を残し、有権者の半数を占めるトランプ支持者のバイデン次期大統領への反発がいっそう強まるとの見解を披歴。ウォータ―ゲート事件への関与をめぐって、弾劾訴追決定直前に辞職したニクソン元大統領を例に引き、自らの命運を自ら決めるべきーとしている。
辞職なら、2024年の選挙に再挑戦できる可能性が残ることも念頭にあるようだ。
検事、大統領関与も捜査
一方、6日の暴動事件を捜査しているワシントンの連邦地方検事代理、マイケル・シェーウィン氏は記者団に対してこう述べた。「すべての登場人物、いかなる役割を担った人物も犯罪を構成するならば、訴追される」ー。
検事代理は名指しこそ避けたが、トランプ大統領の存在を念頭においていることは疑いがない。
大統領が現時点で具体的な捜査対象になっているのかは明らかではないが、トランプ氏については、他にもさまざまな疑惑が取りざたされている。
ここ10年間、連邦所得税を払っていないという脱税疑惑、一族の同族会社「トランプ・オーガナイゼーション」の詐欺、粉飾決算などの疑惑ー。ニューヨーク・マンハッタンの検察当局が捜査中だ。
2016年の大統領選挙の際、以前交際していたポルノ女優に対して日本円にして1400万円にものぼる〝口止め料〟を払ったという問題は、カネの出所が選挙資金のなかから支払われた疑いがあるため、選挙資金法に抵触する可能性があるといわれている。
自らへの恩赦も画策か
現職大統領は在任中、刑事訴追しないというのが司法省の方針だが、いったん職を退くともはや免責による庇護は適用されない。
大統領選挙後、トランプ氏は自らのスキャンダルに関与して有罪を宣告された友人らに、大統領権限によって次々に恩赦を与えてきた。
最後に自らに恩赦を与えて職を去るのではないかという憶測もなされている。〝究極の恩赦〟だが、法律上認められないという説もあり、可能だとしても、その対象は連邦法違反に限られ、脱税など州法に関わる犯罪は対象外との指摘もなされている。
新大統領の就任式は欠席
トランプ大統領は1月7日夜、ツイッターにビデオを投稿、「議会への凶悪な攻撃についてすべてのアメリカ人と同様に激怒している」「議会が選挙結果を認定したからには、1月20日に新しい政権が発足する」と述べ、しおらしいところをみせた。
このままではいよいよ自らの立場が危うくなると考えたのか、「自分の票が盗まれた」「勝者は自分だ」などどいう不当な主張は見られなかった。
意気軒高さはすでにすっかりかげをひそめてしまったようだ。トランプ氏は8日、ツイッターで1月20日のバイデン新
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