2022年12月10日(土)

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2021年1月19日

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村山裕三 (むらやま・ゆうぞう)

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

1953年生まれ。同志社大学経済学部卒。ワシントン大学より経済学博士号取得。野村総合研究所などを経て2004年から現職。専門は経済安全保障、技術政策など。主な著書に、『経済安全保障を考える』、『テクノシステム転換の戦略』(いずれもNHK出版)など。内閣府「イノベーション政策強化推進のための有識者会議『安全・安心』」委員、経済産業省「産業構造審議会、安全保障貿易管理小委員会」委員などを務める。

政策に必要な戦略性
中小企業巻き込む取り組みを

 政府は、産業界と連携して、戦略的不可欠性を持つ技術を生かす政策を進めなくてはならない。技術政策の要諦は、3つの手段─①国家間の技術の流れを自由貿易の原則に委ねる②技術移転や技術協力を通じて政治的影響力を高める③輸出管理や外資規制等を通じた技術管理策を実施する─の組み合わせにある。

 従来の技術政策は③を国際基準に準拠しつつ、①を基本においていた。これでは現代の課題に対応できない。今、望まれるのは、③を強化しつつ、②の領域を新たに築き上げ、技術を外交・安全保障に生かせる体制構築だ。

 ②を実現させるためには、民間企業を巻き込む形での新たな形の技術開発を進めるべきである。下図のように、政府資金を使って戦略的不可欠性を有する「安全・安心」分野や安全保障分野の技術開発を行い、並行してその技術を使った民生分野の技術開発を行うイメージだ。ここでの「安全・安心」とは、テロ対策やサイバーセキュリティー、感染症対策など国民を「守る」技術を指す。新型コロナウイルス感染症の拡大で、ワクチンや医療分野の技術開発も重要となっている。

(出所)筆者作成 写真を拡大

 政府が防衛やこうした安全・安心に関わる技術開発に関与することで、必要なときに外交・安全保障目的に技術を使える道が開け、今まで政府の関わりが薄かった国際的な競争力を持つ企業を、経済安保政策の輪の中に巻き込むことができる。日本の財政状況は厳しいが、将来の日本のためにこそ政府資金を投入する必要性について、国民のコンセンサスを得るべきだ。

 こうした技術力強化とともに、企業や大学に対する技術の流出防止も重要だ。現在、経済産業省や内閣府を中心に技術管理の重要性が呼びかけられているが、大企業はもちろん、中小企業や大学にも広げていく必要がある。

 その際、地域社会との連携がカギになる。情報・技術流出の未然防止のため、京都府警は、14年に「モノづくり・プリザーブ」を発足させ、産業団体、中小企業、行政などを巻き込んで草の根的な仕組みを作った。特に京都市内ではハイテク技術を持つ企業が多く、技術が不正利用されるリスクにどう取り組むか、意識が高まっていた。

 この取り組みでは、地元警察署が地域の工場などを回り、情報収集とともに危機意識の啓発を行い、知らず知らずのうちに企業情報が漏洩したり、外国籍の社員が自国に技術を持ち帰り悪用したりするリスクを未然に防ごうとしている。

 こうした地域を巻き込んだ行動なしに、技術流出を防ぐことはできない。むろん、警察も技術管理に詳しいわけではないため、企業の自主輸出管理をサポートする安全保障貿易情報センター(CISTEC)や専門家などとも連携しながら進める必要がある。経済安全保障の強化には、関係する様々な組織が連携することが必須となる。

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