2022年11月30日(水)

Washington Files

2021年1月18日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

嘘を繰り返すことでトランプ支持者の多くを信じ込ませることに成功

 しかし、トランプ虚言の場合、特異だったのは、たとえ見えすいた嘘であれ、繰り返し、執拗にあらゆるメディアを通じ広めることによって、トランプ支持者の多くを信じ込ませることに成功した点だろう。

 その結果、1月6日には、大統領の扇動演説に後押しされた暴徒たちが「トランプ勝利」を叫び、連邦議事堂に乱入、惨事を引き起こした。

 この集団に加わった熱狂的トランプ支持者の一人、ウェストバージニア州からやってきたダグラス・スウィート(58)(無職)は、一時身柄を拘束され帰宅後、ウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューでこう語っている:

 「大規模選挙不正の証拠があろうがなかろうが、我々には関係ないことだった。わが国の大統領が何度も言っていることだから、信じ込み、同志たちと一緒になって、正義を回復するために抗議デモに参加した。大統領がオバマについても、インチキぶりを批判してきた当時から、インテリ連中がアメリカを破壊しようとしていることに怒りをおぼえ、我慢も限界に来ていた。6日に友人と2人でワシントンにやってきた時も、ホワイトハウス前の抗議集会で大統領自らが『とことん戦おうWe fight like hell!』と叫ぶのを目の当たりにして「大統領命令」だと受け止め、そのまま議事堂に向け行進した。到着し、石段を登り、中に踏み込む前に、神に3度にわたり、祈り、正しい行いかどうか尋ねたが、ノーという返事は返ってこなかった。そのまま乱入した……」

 この告白は、嘘の反復がいかに説得力を持ち、「もうひとつの真実alternative fact」として拡散し得るかを如実に物語っている。そしてまさに大統領はこの手法によって多くの国民を騙し続け、常軌を逸脱する政治を取り仕切ってきた。

 問題は、こうした騙されやすい一般市民のみならず、いまだに“トランプの呪縛”から抜け出せないでいる政治家が少なくないことだ。

 米下院共和党では、去る6日、ペンシルバニアおよびアリゾナ両州の投票結果について、ケブン・マッカーシー院内総務はじめ147人もの議員たちが、異議を唱える大統領に同調、バイデン氏の勝利最終確認を拒否した。2020年大統領選については、これまで各州選管委員会、州議会、警察、そして連邦レベルでも、司法省、連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省(DSA)が徹底調査を行ってきており、その結果としていずれにおいても「不正は存在しなかった」との結論を出している。司法レベルでも、共和党寄り判事が多数を占める最高裁の裁定含め、「選挙不正」の訴えはすべてで退けられた。

 それでもなお、国民多数が導き出した選挙結果を否定し続けるプロ政治家たち―。アメリカ民主主義は今、根本から揺らいでいると言わざるを得ない。 

  
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