世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年1月25日

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 1月5日にサウジの首都リアドで行われた湾岸協力会議の首脳会議で、サウジのムハンマド皇太子は2017年6月以来続いたカタールとの断交を中止すると発表した。サウジ主導の「カタール封鎖」には、UAE、バーレーン、エジプトが加わっていた。

Oksana Kuznetsova / Mikhail Sedov / iStock / Getty Images Plus

 サウジがカタールとの断交に踏み切った理由として挙げていたのは、カタールがイランに過度に接近していること、サウジがイスラム過激派集団とみなしているムスリム同胞団をカタールが支援していること、であった。

 しかし、サウジがカタールと断交して以来、カタールはイランとの関係をさらに深めている。もともとカタールはイランと天然ガス田を共有している。カタールの世界最大級のノースフィールドガス田とイランの南パルスガス田はつながっていて、天然ガスの面でカタールはイランと深い関係にある。

 それに加えて、カタールの航空機は通常サウジやUAEの領空を飛んでいるが、サウジとUAEが領空を封鎖したため、カタールの航空機はイランの領空を利用せざるを得なくなった。カタールはイラン領空の使用料としてイランに年間1億ドル払っている由である。

 カタールとの断交によりサウジ、UAEなどは経済的に大きな損失を蒙り、カタールとの関係修復を模索していたと考えられる。

 今回和解が成立した直接の契機は、トランプが選挙で負けたことを受け、サウジが同国に批判的なバイデンの大統領就任を見越してのことである、との見方がある。しかし、実はトランプの娘婿で大統領上級顧問のクシュナーがサウジとカタールを訪問、和解工作をしている。カタールには米国の中東最大のアルウデイド基地があり、米国としてはサウジとカタールの対立は避けたかったものと思われる。

 今回の和解にはムハンマド皇太子が一役買ったことで評価されているが、ムハンマド皇太子はカショギの殺害、イエメンとの戦争などで広く批判されており、今回の和解でムハンマド皇太子が他の問題について免責になったわけではない。その上、バイデン次期大統領はサウジの人権問題を批判し、サウジとの関係を再評価すると述べている。バイデン政権の下で米・サウジ関係は試練にさらされることとなるだろう。

 今回の合意は、アラブ4か国がカタールと外交、運輸関係を断絶した結果の深い傷を癒すのに十分か、それとも水面下の対立関係が続く冷たい平和となるのか。「カタール封鎖」の深い傷を癒すのに十分とは思えない。

 サウジ・グループとカタールは中東の多くのの問題で立場を異にしている。ムスリム同胞団に対する評価の違いは今回の合意で解消したわけではない。また、例えばリビア情勢について、カタールがトリポリの暫定政府を支援しているのに対し、サウジ、UAE、エジプトは反政府軍事組織「リビア国民軍」を支援している。したがって、カタールとサウジ、UAE、エジプトとの対立は今後とも水面下で続くものと考えられる。

  
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