2022年6月30日(木)

Washington Files

2021年1月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

トランプ氏の実際の資産規模は?

 一方、トランプ氏の実際の資産規模については大きなミステリーのままとなっている。政治デジタルメディアThe Hillによると、前大統領は昨年提出した「収支報告書」の中で、「総資産最低14億ドル」と説明してきた。しかし、これはあくまで自己申告に過ぎず、政府当局の監査に基づいた確たるものではなく、額面通りに受け取る金融専門家は少ない。

 また当時、かりに同程度に近い資産があったとしても、その後、大統領選敗退によるブランド力の低下、さらに1月6日の議事堂乱入・占拠事件扇動による著しい信用失墜により、資産価値は大幅に下落したとみられている。果たしてこれらの資産売却に追い込まれたとしても、抱え込んだ負債をすべて埋め合わせることができるかどうかについても、疑問がもたれている。なお、このうち手元のキャッシュおよび可処分資産は「580万ドル程度」とみられるという。

 もともと、トランプ氏が以前から手掛けてきた事業の多くはゴルフ、カジノ、ホテルなど観光・レジャーに関わるものが主体だった。だが折り悪く、そのどれもが今日、コロナ禍の直撃を受け、いずれも経営難に直面している。

 トランプ氏は大統領選に立候補した2016年当時、すでに多くの借金を抱えていることについて記者団から質問を受け、自ら「借金王the king of debt」であることを認めた上で「

借入金の規模は自分の資産および業界スタンダードからすれば常識の範囲内だ」と豪語し話題になったことがある。

 しかし、さまざまな不動産取引めぐり、すでに30件以上に上る訴訟問題、債券取り立て騒ぎに直面、業界ではいずれ破産宣告に追い込まれるとの見方も少なくない。この点について、事情通のジョン・ポットー・ミシガン大学教授(商法)はthe Hillに対し「トランプ氏はこれまで金融界の善意financial goodwillに頼ってきたが、今やその崩壊に直面している。この世界では、借り手が借金の返済ができなくなれば、貸し手としては放免するか告訴するかのどちらかの道を選ぶことになる。彼の場合、貸し手の同意が得られなくなれば、残された道は自己破産申告しかなくなるだろう」と語っている。

 加えてワシントンでは、トランプ氏がすでに議事堂乱入・占拠事件に関連し下院で弾劾訴追されたのに続き、来月9日に上院での弾劾裁判が開催されることが決まった。

 バイデン新大統領が登場する1月20日午前、米議事堂での伝統ある就任宣誓式をすっぽかし、そそくさとマイアミの自分の所有するリゾートに引き上げたトランプ前大統領―。しかし、今後行く手には、ゴルフ三昧でのんびり英気を養うにはほど遠い難題がいくつも立ちはだかっている。

  
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