2024年12月14日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年2月10日

キャリア外交官復活

 バイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官及びジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の発言からバイデン外交が徐々に見えてきました。

 第1に、キャリア外交官を活用した外交戦略の展開です。バイデン大統領は2月4日、米国務省に出向き職員を前に外交政策について演説を行いました。その冒頭でバイデン氏は、「あなたの専門知識に価値を置き敬意を払う」と強調して職員の士気を高めました。

 「あなたは外交の中心にいる」とも述べ、「我々はあなたを必要としているし信頼もしている」と語ったのです。バイデン氏は国務省を軽視して独断と直観で外交を行ったトランプ前大統領との相違を鮮明にしました。

民主主義的価値観を傷つけるのは中国とロシアだけか?

 第2に、内政と同様、人権と民主主義的価値観をバックボーンにした外交です。バイデン大統領は国務省での外交演説で人権を侵し、民主主義的価値観を傷つける中国及びロシアを名指して批判しました。権威主義志向が強く野心を抱いている中国や、サイバー攻撃を仕掛けて米国社会をかく乱するロシアに対して対抗すると主張したのです。

 トランプ前大統領は中国に関して通商のみに関心がありました。一方、ロシアについてはトランプ氏は、「私はロシアに最も厳しい米国の大統領だ」と語気を強めましたが、本気でウラジーミル・プーチン大統領に立ち向かうことはありませんでした。

 バイデン大統領はトランプ氏とは異なり、「ロシアに責任を負わせる」という立場をとっています。ここでもトランプ政権との政策の相違を明確にしました。

 バイデン氏の「分身」であるブリンケン国務長官は就任後初の中国外交トップの楊潔篪共産党政治局員との電話会談で、新疆ウイグル自治区における少数民族及び、チベット族や香港の民主活動家の問題を取り上げ、中国に先制パンチを浴びせました。バイデン政権にとって人権と民主主義的価値観が「核心的利益」であることを楊氏は理解したことでしょう。

 要するに、バイデン大統領は人権を侵害し、民主主義的価値観を攻撃する国に対してグローバルに対抗措置をとる構えをみせています。ただ、バイデン氏は国内においても民主主義的価値観を脅かす勢力と戦わなければなりません。ネット上で陰謀論を展開し、1月6日に発生した米議会議事堂乱入事件で主要な役割を果たしたQアノンの信者や、武装した極右組織に対する対応を迫らている点を看過するこができません。


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