同族会社疑惑、女性問題で起訴も
トランプ氏が暴動を「扇動」したとの見方については、法律家の間でも「言論の自由の問題だ」(トランプ氏の弁護団)などとして反発する向きも少なくない。検察の立証にはかなりの困難が伴うことも予想される。
そこでクローズアップされてきたのが、議会襲撃以外の問題でのトランプ起訴だ。
議会襲撃は降ってわいたように発生した事件だが、トランプ氏をめぐるスキャンダルについては、以前から検察当局が捜査にあたってきた。
氏に関する最大の疑惑は、〝ロシア・ゲート事件〟だ。2016年の大統領選にロシアが違法介入、トランプ氏陣営を密かに支援したことに自ら関与していたのではないかといわれた。
特別検察官の捜査によって、トランプ氏自身のかかわりについては、証拠不十分として決着がついている。
しかし、検察は他の事件をめぐってなお執念を燃やす。
ニューヨーク・マンハッタン地方検察庁のサイラス・バンス・ジュニア検事は、トランプ氏が、2016年の大統領選挙の際、密かに関係をもっていた〝熟女ポルノ女優〟に対して日本円で1400万円にのぼる口止め料を支払った問題について捜査している。
口止め料の原資は支持者らから集めた選挙資金ではないかといわれ、そうであれば選挙資金に関する法律に抵触する。
地検はこの関連で、トランプ氏と氏の同族会社「トランプ・オーガナイゼーション」がニューヨーク州内に所有する213エーカー(1エーカーは4046平㍍)の土地に関する資料を提出するよう求めている。
この土地については、別の事件で有罪判決を受けたトランプ氏の顧問弁護士が2019年に下院で証言した際、不動産に関わる税の軽減を図り、または有利な融資を受けるために財務諸表を操作、価格を高く、または低く見積もったりしていたと証言している。事実とすれば脱税や粉飾決算に問われる可能性がある。