日立ブランドの家電事業を行っている日立グローバルライフソリューションズ社(最近、総合家電メーカーのほとんどが、家電部門を子会社化しており、同社は2019年の設立。昔と変わらず、商品企画から設計・製造・営業、そして、アフターサービスまでのバリューチェーンを統合しているのが強み)が、新しい2つの契約をしました。一つは、Groove X社との資本提携、そしてもう一つは、トルコのアルチェリク社との合弁会社設立です。それぞれ、どんな考えがあるのか、日立グローバルライフソリューションズ社取締役社長谷口潤氏(以下 谷口社長)とのオンラインインタビューを基にレポートします。
スマートホームのために、 Groove X社との資本提携
IoT、AIで生活が変わると発表されて、はやどれだけの時間が経ったことでしょうか? 生活が劇的に変わったという感じは、ほとんどないですね。発表された時より、WiFi対応の家電が増えたといえば、増えましたが、ただそれだけ。変わるのは政治とコロナと暮らし向きばかりと言う感じではないでしょうか?
谷口社長は、だからこそ、Groove X社と資本提携したのだと言います。理由は、スマートホームに欠けているものを補うためです。
人という生き物は、確かにすごい機能を持っています。神に似せ作られたと言われれば、なるほどと思います。基本的なアクションは、「感知」し、「考え」、「行動」する。ロボットは、それを「センサー」「AI」「ハード、メカニズム」で対応します。「AI」は、ネットに集積されるビッグデーターをディープラーニングすることにより飛躍的にのびました。「IoT」は「AI」と並び称されるように使われますが、それを円満活用するためのシステムにしか過ぎません。ハード、メカニズムの発達もすごく、卵を割らないで掴むことも、直立二本歩行もできます。では、センサーはどうか。各家電に搭載されたセンサーがあるので、IoTでなんとか……。
実は、ここが大いに誤った認識なのです。例えば、エアコン。フル「オート」でも快適でない時があります。それは、その人がいる場所と、エアコンがセンシングしている位置が異なるからです。また、コロナのため「換気」が注目を浴びていますが、ほとんどの建物に二酸化炭素のセンサーは設置されていませんし、それを内蔵した家電はありません。
つまり、室内空気環境ということ一つをとっても、人が感じている「気温」「湿度」「風」「アレルゲン」「香り」、そして感じられないのに問題がでてくる「二酸化炭素量」「微小粒子状物質」「総揮発性有機化合物」を、正しくデーター取りされていないのです。
なぜでしょうか? 理由は簡単です。エアコンが対応しているのは、「気温」「湿度」のみ。空気清浄機が対応しているのは、「微小粒子状物質」「総揮発性有機化合物」です。要するに、家電は、人間が技術対応できる部分を、次々と製品化したもので、人を感じる一部だけにしか対応していないからです。
こうなると、人と同じ場所で、人が感じることをデーター化する必要があります。日立GLS社が注目した「LOVOT(ラボット)」は、有意義なことをするロボットではありません。人の後追いをする赤ちゃんのようなロボットです。この常に人の近くにいるLOVOTに、センサーを付けると、本当に、人がいる環境をセンシングできるというわけです。
今までは、××ができるロボット、ビッグデーターを駆使して自分で学習、判断できるロボット、人と自然にコミュニケーションできるロボットはありましたが、人と同じことを感じるロボットはありませんでした。日立は、この新しい発想のロボットのベースとしてLOVOTをセレクトしたわけです。
今まであるロボットでこれに近いのは、人が入れないところに入り、データーをとってくる探査ロボットでしょうが、これは月面や火災現場でなく、日常の話。生活に溶け込む必要があります。その点でも人に好かれやすいLOVOTは、最適なセレクトとも言えます。
ただし、その様な大枠のイメージはあっても、まだ具体的には、なだ何も決まっていない状態だそうです。Groove X社と資本提携、LOVOTを活かせるか、否かは今後の日立次第と言えます。