2024年12月26日(木)

WEDGE REPORT

2021年3月3日

さりげなく徐々に軌道修正

 一連の訂正をめぐる動きをどうみるべきか。

 アメリカはこれまで一貫して、尖閣について、日本の主権を認めることは避け続けてきたてきた。

 防衛対象であると明言するのはやむを得ないとしても、日中間のトゲである微妙な問題で、ことさら日本に肩入れして中国の反発を招き、情勢がさらに不安定化することを避けたいとの思惑からだった。

 一方で、目立たない形で、その方針を変化させてきた事実も指摘されるべきだろう。

 それほど知られていないが、アメリカ政府は4半世紀前の1996年、日本政府に対し、外交ルートを通じて「尖閣諸島の主権がどの国にあるかは、微妙な問題であり、いずれの立場をも支持するのは避けたい」という公式見解を伝えたこと。

 米政府は同時に中国政府、台湾にも同様の説明をおこなった。アメリカはこの時、「当事者同士が話し合いによって、平和的に解決することを望む」と強調した。

 しかし、日米安保条約第5条が、同諸島に適用されるかどうかについては、この時、明確な態度を示さなかった。

 同じ年に、当時のモンデール駐日米大使が、「尖閣の紛争に米軍が介入する安保条約上の責務はない」と発言して物議をかもしたが、当時の尖閣防衛に対する米国の方針はまだ、この程度だった。

 そういうアメリカも、今世紀に入ってからは積極姿勢に転じ、尖閣への5条適用に言及し始めた。

 2004年3月、当時ワシントン勤務中の筆者は国務省の記者会見で当時の副報道官にこの問題について質問したことがある。

 「尖閣諸島は沖縄返還以来、日本の施政管理下にある。日米安保条約第5条は日本の施政のもとにある領域が対象だから、尖閣諸島にも当然適用される」と述べ、今度は、はっきりと米国による防衛対象であることを認めた。その一方で、「米国は最終的な主権に関する問題については、いかなる立場をもとらない」として、主権がどこにあるのか、どこの国の領土かについては、ここでも立ち入ることは慎重に避けた。

 国防次官補をつとめ、その後国務副長官に就任した知日派、リチャード・アーミテージ氏が同様の発言をしたのもこの時期だった。


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