2022年11月27日(日)

WEDGE REPORT

2021年3月3日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

速記録に〝実績〟残す?

 こういう状況のなかで、2021年1月にバイデン大統領が就任した当初、日本国内でも対中強硬派を中心に、新政権が中国へ柔軟な態度をとるのではないかと危惧する向きがあったが、それは杞憂に終わった。

 1月28日の大統領と菅首相との電話協議では、日本側からの言及をまたずに先方から、尖閣へ安保条約5条が適用されるという表明がなされたのも、その表れで、日本側が歓迎したのは当然だった。

 カービー報道官の〝失言〟があったのは、それから時を置かずしてのタイミングだった。

 この時、報道官は尖閣問題についてかなりの時間費やして発言している。

 日本の主権を認めたくだりの前段では、「すべての国家は、大小を問わず、その主権を保障され、強制力から解放されて規制と規範に基づいた経済活動が保障されるべきだ」「自由で開かれた国際的秩序による利益は、米国とその同盟国、そして中国も享受しているが、中国は自らの行動でそれをダメにしている」、「われわれは中国による戦略的な挑戦に対して、軍備の近代化、同盟国との連携強化で対抗する」などだ。

 これだけ詳細かつ丁寧に尖閣について語っていながら、「主権」の部分についてだけ、とってつけたようにミスだったと説明するのは、いかにも不自然というべきだろう。

 「誤り」のくだりを、速記録から削除せずに放置しているのも不可解だ。

 それやこれや考えると、近い将来、実際に方針転換をすることを念頭に、それに向けての〝環境整備〟、つまり事前の予告と中国の反応を探るための〝瀬踏み〟ではなかったか。

 「ミス」の部分を速記録に残しておくのも、国防総省報道官発言としての〝実績〟を作る意図と思えなくもない。

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