表参道を走る、走る
駿は再度、オーナーに頭を下げて、シェフとしてやっていけるかどうか、テストを受けることになる。駿は合格する。
香子は、くるみと駿がつきあっていても、デートもしていないことに心をくだいて、友人が那須塩原で開店して、1年後まで予約が取れないというフレンチレストランの食事の予約をとる。その日は、駿のレストランは、昼食の予約が1組は入っているが、17時過ぎの新幹線に乗るには、十分余裕があったはずだった。
しかし、予約客は渋滞に巻き込まれて、食事の開始が遅れた。携帯電話をもっていない、駿はくるみに連絡がつかない。表参道を走る、走る。
くるみが仕えていて、いまや同居人の元社長の葉山(向井)から、くるみに連絡が入る。トルコの事業資金が、くるみからSNSのフォロアーの投資家の社長を紹介してもらい、融資してもらうことになったことを報告した。駿とデートにでかける時刻が迫っているのに、マンションにまだいることに気づいた葉山は、香子(夏川)に電話を代わるように頼んで、駿ではなく、自分がフレンチレストランにいくことを承諾してもらう。
「真柴にはいつも世話になっているから、いつも笑顔でいて欲しいいんです」と。
そして、葉山も、くるみを目指して、走る、走る。駿の走るシーンと繰り返し、繰り返し、ふたりの姿がかわりがわりに画面を横切る。流れる風景は、表参道のしゃれた店々と、美しい並木道である。
表参道は、これまでの映画とドラマのなかで、幾度も舞台となった。ふたりがくるみを求めて走るシーンは、制作者たちの記憶に残るだろう。
葉山がついに駿より先に追いついて、ふたりは東京駅を目指してタクシーに乗り込む。
道を隔てたところから、駿が「くるみー」と初めて名前を呼ぶシーンも切ない。
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