2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月23日

 カナダの情報機関出身のジャーナリストMichael Cole(コール)が、Diplomat誌のウェブサイトに9月24日付で、 もし中国が台湾を攻撃した場合、台湾の人々の大多数は同民族である中国人と戦わないだろうと言う人もいるが、台湾という確立した民主主義的文化の中に生きている台湾の人々は戦争という現実に直面すれば戦うだろう、と論じています。

 すなわち、台湾の軍の上層部は今でも本土人の力が強く、中国軍の侵入に対しては、同じ中国人に対して戦おうとはしないであろうということがよく言われている。また、中台の戦争は、共産党と国民党の内戦の続きだが、軍事力の優勢が中国側に傾いてしまった現在、国民党側は敢えて負ける戦争はしないだろうとも言われている。しかも、中国本土はもはや共産党とは言えないという人もいる。

 しかし、有史以来の台湾の歴史を見ると、必ずしも同じ民族的一体性の下にあったとも言えないし、政治的には、本土の共産党一党支配に対して台湾は民主主義であり、台湾2300万人の住民は、自由と民主主義を捨てる気は全くない。

 イラン・イラク戦争の例を見ると、サダム・フセインは、湾岸のアラブはイラクに味方すると思って攻め込んだが、激しい抵抗に遭った。他方、盛り返したイランは、湾岸のシーア派はイランに味方すると思ったが、それもあてが外れた。

 ほとんどすべての台湾人が、その出身の民族的アイデンティティーにかかわらず、台湾の文化的、民主的生活スタイルの産物だ。それゆえ、一たび戦争が始まり、爆撃などで同胞が殺された場合、台湾人が一つの旗の下に結束することは疑いが無い、と述べています。

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 本論説中の、イラン・イラク戦争と台湾との対比は興味深いものです。イラン・イラク戦争末期、バスラ正面での戦闘で、シーア派中心のイラク兵が、同じシーア派のイラン軍を前に屍山血河を築いてバスラを守り抜いたのは、常々イラン人から蔑視、差別を受けているアラブ人のペルシャ人に対する抵抗のようにも思われましたが、コールが指摘する通り、戦争初期においては、湾岸産油地帯のアラブ人はサダム・フセイン軍の侵攻に呼応していません。つまり、自分たちが日々その中に生きている既存の政治社会体制を崩そうという侵略者に対しては、住民は抵抗するということです。それは、豊かな民主的な生活をエンジョイしている台湾人については、まさに、当てはまることでしょう。


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