米CNAS上級顧問のパトリック・クローニンが、9月25日付Diplomat誌ウェブサイトで、台湾の馬総統は、8月に、「東シナ海平和イニシアティブ」を呼びかけたにもかかわらず、南シナ海では実弾演習を行ったり中国と同様の領土主張をし、尖閣には40隻の漁船を送ったが、台湾は、むしろ、ASEAN、日本、米国と協力して地域の安定に資するべきである、と論じています。
すなわち、8月に馬総統は、「東シナ海平和イニシアティヴ」を発表して、相互の抑制と協力を訴えた。それは、この地域における最近のすぐれた文書の一つであったが、その後太平島では実弾演習を行い、東シナ海では40隻の漁船を送り込んでいる。南シナ海では、中国も台湾も牛の舌と呼ばれる広域の領土主張をしている。
中国との経済関係が良いだけに、台湾は、日本やベトナムと紛争を起こしてもよいと思っているのかもしれない。台湾は、主権問題についての米国の中立的姿勢と、米国の日本に対する条約上の義務とを混同して、アメリカの意図を誤解しているのかもしれない。スカーボロー紛争の例を見ても、中国に妥協することは宥和政策にしかならない。台湾は、自らの主権に対する潜在的脅威は中国から来ることを認識しなければならない。
最近のAPECの会議では、多くの国が、台湾が今後の行動規範(Code of Conduct)の討議に参加すべきだと述べていた。台湾はASEANの討議にもっと参加すべきだ。中国は台湾の参加に抵抗するだろうが、台湾の参加は、こうした話し合いに、地域全体の利益となり、かつ、台湾の安全保障にとってもプラスとなる、革新的提言をもたらす可能性がある。アジア専門家の中には、台湾が、南シナ海における「牛の舌」と呼ばれる海域に対する領有権をほぼ全て放棄し、代わりに、国際法の規定に呼応する形で、地形に基づいた国境を主張するようなことになれば、台湾は光輝く存在となるだろうとの見解もある。
さらに、台湾には、地域が必要としている建設的対話と信頼醸成措置の確立に向けて、リーダーシップを発揮できる可能性がある。台湾は、太平島にASEANの代表を招待して、東シナ海の問題について建設的な討議をする場を作ってはどうだろうか。そういう形で、米国、ASEAN、日本の支持を得て、台湾は自らの戦略的利益を保全することができる、と述べています。
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クローニンの意図は、現在の南シナ海、東シナ海の紛争を契機に台湾に活躍の場を与えようということに尽きます。確かに、APECの会議は、台湾が参加している例外的な会議であり、そこで台湾に役割を与えようというのは、親台湾戦略として有意義です。