7月1日、中国共産党は、結党100周年を迎えた。これを受けて、7月2日付のワシントン・ポスト紙では、同紙コラムニストのジョージ・ウィルが、共産党の思想的歴史背景にも触れながら、民主主義国の台湾に関する米国の政策について、「“戦略的曖昧さ”はもはや賢明な米国の台湾政策ではない」との論説を書いている。
ジョージ・ウィルはワシントンで尊敬されているコラムニストであるが、今回の論説も歴史を踏まえた良い論説である。特に、プロレタリアートの前衛としての共産党という考え方はマルクス主義というよりレーニン主義であるという指摘はその通りである。それがインテリがその構成において多くを占める共産党がプロレタリアートの独裁を実践するという考えにつながり、その共産党を守るために全てのことがなされなければならないということになる。ジョージ・ウィルのこの指摘は深い洞察に基づくものであるが、レーニンが「何をなすべきか」との本に書いたことである。これが共産党統治を分析するうえで、最も重要ではないかと思われる。
アルキメデスが、「われに足場を与えよ、さすれば地球をも動かして見せる」と、梃子の原理を説明したが、レーニンはこれをもじって、「我に組織を与えよ、さすれば地球をひっくり返して見せる」と言っている。
台湾に関する米国の「戦略的曖昧さ」はもはや賢明な政策ではないのではないかとのジョージ・ウィルの意見については、そう思う。リチャード・ハース米外交評議会会長もそう考えている。米国が台湾を守る気があることをはっきりと示しておくことが抑止につながると思われる。
この問題について、ホワイトハウスでアジア・太平洋政策の統括責任者を務めるカート・キャンベルは、「戦略的曖昧さ」政策の堅持を主張している。この点は今後議会をもまきこんでワシントンで議論されることになるだろう。キャンベルは台湾をめぐる情勢が動く中で、現状を維持することが情勢の鎮静化につながるという考えであると思われ、日米豪印のクワッドが台湾独立を支持しないと声明するのも一案と考えていると聞く。こういう融和姿勢は、軍備拡張を続け、今は相当大胆になった中国へ間違ったメッセージを送ることになりかねないと危惧される。
台湾問題に関しては、日米間で突っ込んだ意見交換をする必要があると思われる。独立は支持しないとの意思表示以外にいろいろな意思表示がありうるのであって、先の日米共同声明やG7声明のように両岸関係の平和的解決をあくまで求めるとの意思表示が、現下の情勢では最も良いのではないかと思われる。
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