日本企業のジョブ型は成果主義の焼き直し
── 日本では、就職氷河期について自己責任論だという意見を耳にすることがあります。これについてはどう考えますか?
濱口 たとえ就職氷河期であっても、新卒一括採用で正規雇用された人たちが、自己責任論を展開するのはイデオロギー的というよりも、実感としてそうなるんだと思います。日本の社会の感覚からすると、就職氷河期を除けば、よほどのことがない限り新卒で就職できたのが大きいと思いますね。21世紀になっても新卒一括採用は続いていますから。
もう一つは、就職氷河期と言われている世代でも、自らが新卒で正規雇用されたことは運が良かったとは思いたくない。一生懸命がんばった当然の報酬として、現在の地位を得られたと考えたほうが精神的にも収まりが良いからではないでしょうか。
── 最後に、最近三菱UFJ銀行や富士通、ソニーなど一部の企業がジョブ型雇用を導入し始めると報道されています。これについて先生はどう見ていますか?
濱口 日本の企業で導入しようとしているジョブ型と言われている人事制度のほとんどは、少し前に取り入れようとして失敗した成果主義の焼き直しが多いように見えます。本当にジョブ型雇用にするならば、採用の段階から変えていかなければならない。そこまでする企業はほとんどないでしょう。一方で、優秀なIT人材に関しては高賃金で採用するという現象も見られます。その辺は局所的にジョブ型に近いのかなとは思いますね。ただし、メインストリームで完全にジョブ型に変えようという企業は見ている限りほとんどありません。ジョブ型が本来、私が名付けたものと違うものとして氾濫しているのには違和感を覚えますね。
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