新しい原点回帰

2021年11月14日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 戦後の日本経済を牽引したパナソニックの創業者・松下幸之助氏や、多くの企業の再建に尽力し経団連会長も務めた土光敏夫氏、通信事業への参入やJALの再建にも力を振るった京セラ名誉会長の稲盛和夫氏なども尊徳の影響を受けた。彼らは国の財政再建などにも心血を注いだが、それはまさに尊徳の「分度」の実践だった。

 大日本報徳社など各地の報徳社は、相互扶助組織の役割も果たした。協同で積み立てた「報徳金」を運用し、無利子・低利で貸し付けることで、田畑の開墾や新しい産業の育成を支援した。大日本報徳社の2代目社長だった岡田良一郎・衆議院議員は、1879年(明治12年)に日本最古の信用金庫である掛川信用金庫(現・島田掛川信用金庫)を設立したが、報徳思想が日本における協同組合運動の思想的な源流になっているとされる。

日本の財政に
「分度」はあるのか?

「まさに今の時代こそ求められている考え方ではないでしょうか」と鷲山社長は言う。利益一辺倒の「強欲資本主義」への見直しが求められ、持続可能な社会を作るSDGsが国連によって提唱され、日本でも企業や行政などに広がっている。SDGsも成長を否定しているのではなく、持続可能な成長を追い求めている。まさに道徳と経済の一円融合である。今、日本ではSDGsがさしずめブームのようになっているが、200年前に活躍した尊徳の思想を見直すタイミングかもしれない。

 1748回目の常会での社長講話で鷲山氏は「国民が権力に『分度』を要求していくことが必要だ」と参加者に語りかけた。

 新型コロナウイルス対策で大型の財政出動を行ったこともあり、国債などの日本の国の「借金」は1200兆円を突破、過去最大となった。国債で借金をして、税収を上回る歳出を続けている200年後の国の姿を、尊徳はどう見るだろうか。

写真=湯澤 毅 Takeshi Yuzawa

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Part 1 
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Part 2 
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COLUMN 
〝住まい〟から始まる未来 一人でも安心して暮らせる街に 編集部
Part 3 
増加する高齢者と医療需要 地域一帯在宅ケアで解決を 編集部
Part 4 
量から質の時代へ 保育園整備に訪れた〝転換点〟 
編集部
CHRONICLE 
ワンイシューや人気投票になりがちな東京都知事選挙 編集部
Part 5 
複雑極まる都区制度 権限の〝奪い合い〟の議論に終止符を 編集部
Part 6 
財源格差広がる23区 将来を見据えた分配機能を備えよ 土居丈朗(慶應義塾大学経済学部教授)
Part 7 
権限移譲の争いやめ 都区は未来に備えた体制整備を 伊藤正次(東京都立大学大学院法学政治学研究科教授)

  
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東京と言えば、五輪やコロナばかりがクローズアップされるが、問題はそれだけではない。

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