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2012年12月21日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

投票は「国民の義務」か「個人の自由」か?

 そもそも投票を「国民の義務」だと考えるか、「個人の自由」だと考えるかで、投票しないということに対する認識は自ずと違ってくるだろう。

図2 都道府県別高齢化率と投票率
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 財団法人明るい選挙推進協議会が前回衆院選に関して行ったアンケート調査によれば、国民の認識は世代で大きく異なることが報告されている。つまり、年齢が高くなるほど投票は「国民の義務」であると考える者の割合が大きくなり(20歳代では33.1%、70歳代は76.9%)、したがって投票した者の割合が大きくなる。一方、年齢が低いほど「個人の自由」だと考える者の割合が大きくなり(20歳代では42.4%、70歳代は7.2%)、したがって棄権した者の割合が大きくなっている。

 しかも、この傾向は衆参、時代の別を問わず見られる。蛇足となるが、高齢者の割合が大きければ大きいほど投票率は高くなることが予想され、実際に都道府県別の投票率と高齢化率をプロットしてみると確かに確認できる(図2)。しかし、今回の選挙結果の悩ましいところは、高齢化率が高い県ほど、投票率の低下幅が大きくなっている点にある(図3)。地域によっては悪天候や、自治体財政の都合による投票所の統廃合等で「交通弱者」である高齢者にしわ寄せがいった可能性が指摘できる。

図3 投票率の変化と高齢化率
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 以上から、投票が「国民の義務」であると考える者から見れば棄権は悪であり、逆に「個人の自由」と考える側から見れば問題ではない。

 さらに極論すれば、投票を「国民の義務」であるとする見方を国家が採用した場合、棄権に対して罰則を設けることも考えられる。実際に、義務投票制を採用している国は古くから存在し、シンガポールのように選挙人名簿からの抹消や罰金を含む罰則措置をとる国もある。概してみれば、こうした国の投票率は高く、例えばオーストラリアでは、連邦選挙等の投票率は90%以上を維持しているとのことである。ただし、筆者は、罰則などを背景にした高投票率にはそれはそれで問題があると考えている。

「良い棄権」と「悪い棄権」

 ところで、低投票率に対する批判とは、裏を返せば棄権率の高さが問題にされていると言える。そうだとすれば、いついかなる場合も棄権は良くないのだろうか。

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