「高付加価値化と高価格化に成功している企業に共通するのは、作り手の理論を優先させるプロダクトアウトで製品開発を行っている点だ。その製品の価格帯を見て、そこから逆算した原価企画のものづくりは行わない」
早稲田大学ビジネススクールの長沢伸也教授は『Wedge』2020年3月号「泥沼化する価格競争から抜け出す『高くても売れる』ブランド戦略」で高付加価値戦略へのカギを「消費者に新たな価値を提供し、それに伝えて高価格を維持し、短期間で連続して革新をおこしていくことが重要」と説く。
これは、ものづくりだけでなく、サービス業をはじめとする他の業界でも言えることではないのだろうか。
確かな企業戦略、政治が示すべき方向性
プロダクトアウトの考え方は、日本の中小企業が抱える「下請け脱却」という課題を乗り越えるためのヒントにもなる。特殊ねじやプーリー(滑車)といった機械要素部品の製造販売会社「鍋屋バイテック」(岐阜県関市)は、世界の企業から受注される企業へと「変貌」している。(「付加価値の裏に〝戦略〟あり 『値決め』ができる企業に学べ」)
独自の市場調査による需要発掘や、自社製品の開発および製品カタログを販売。自らの技術がどのように求められているのか、何ができるのかを考え、その力を世界に宣伝していった。「多品種少量生産によって、大企業では利益がとれない細かなニーズに素早く対応することが当社の強みだ」と同社の岡本友二郎社長は語る。
日本企業の経営者は今こそ、自身の決断が国民生活、ひいては日本経済の再生にもつながることを自覚し、一歩前へ踏み出す時だ。それはまた、衆議院選挙後の政権運営でも同様のことが言えるだろう。