2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年11月2日

 かかる保護主義や反貿易主義は、多分に過去4年のトランプ政治の結果であると言える。吟味もしない一方的なレトリックに長けたトランプ政治は、選挙民や米国の社会カルチャーに多大の悪影響を与え、深刻な後遺症を残している。

中東和平や対中関係にも残るトランプの「杭」

 今更ながらトランプ政治の深い爪痕を見る思いがする。バイデンはそれからなかなか脱却できないでいる。外交についても同様だ。中東和平、アフガニスタン、対中関係にトランプが打った杭(アブラハム合意、タリバン=トランプ合意、対中関税発動)は、なかなか抜けないどころか、それは既成事実となり、今後の政策はそれを前提に進めねばならなくなっている。

 かつて米国では外交は超党派で行うものと言われたが、最近は外交も党派的になってきた。バイデンの政策フリーハンドは意図的に狭められた。今回発表されたバイデンの対中貿易政策もトランプと同じだと批判されているが、代替策はなかったとも言える。

 対中関税を緩和すれば対中弱腰だと批判され、関税を維持すればトランプと同じだと批判される。唯一考え得るのは、中国から譲歩を得た上で、関税を撤廃することであったのだろうが、うまく行かなかったのであろう。やはりTPP参加で突破口を開くというのが目下最善、最強であり、バイデン政権には是非その道を進んで貰いたいものだ。

 米国の保護主義、反貿易主義を是正するために、日本など同盟諸国は出来るだけ米国と協力していかざるを得ず、また、そうすることが重要であろう。

   
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