アメリカでは自由貿易は雇用を奪うなどと議会も国民も反対していると思われがちである。しかし、世論調査など各種数字はその逆を示している。バイデン政権が環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)加盟を検討する条件が整いつつあるように見える。
Chicago Council on Foreign Affairs が10月7日付でバイデン政権の外交政策に関する世論調査を発表した。その中で、貿易が消費者、国民生活、米国経済にプラスと考える人は、いずれも75%以上を占めた。貿易が製造業や雇用創出にプラスと考える人も、各々60%以上となった。
一方、中国との貿易が米国の国家安全保障を弱体化させると考える人は58%に及んだ。グローバル化は米国にプラス、米国は世界で積極的役割を果たべきはそれぞれ60%以上を占めた。
10月4日のUSTRタイ代表のバイデン政権の貿易政策演説は中身が薄く、トランプ政権と変わらないと批判の声が大きいが、演説から読み取れるものもある。まず、超党派で高まる反中気運、中国との貿易がアメリカの安全を脅かすという国民感情もあり、関税を撤廃することで、特に中間選挙前に中国に甘いとみられることはできない。
しかし、むやみに関税を課すのではなく、制裁関税適用除外制度を用いながら、サプライチェーンの確保と経済や軍事安全保障にかかわる部門に焦点があてられそうである。タイは、中国がCPTPP加盟申請をしたことへのバイデン政権の対応を訊かれたのに対し、「CPTPPの基盤となったTPPは数年前に交渉されたものだ。…インド太平洋地域のパートナーや同盟国への投資や関与については、今の現実や課題に対応しなくてはならない」と回答した。
タイは加盟に関し肯定も否定もしていない。「アメリカの経済利益を守るためにあらゆる手段を用い、必要ならば、新たな手段も開発する」と述べている。通商法301条や関税はすでに用いられた手法であり「新たな手法」とは何かが問われている。