ピーターソン国際経済研究所のジェフリー・ショットが、9月23日付の同研究所のサイトで、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)加盟申請はバイデンに難しい対応を迫る、米国は11月のAPEC首脳会議でTPP復帰を明らかにすべきだと述べている。
ショットは長い間日本とも関係の深かった国際貿易の専門家である。精緻な議論をしている。ショットは、(1)交渉には時間がかかる、中国は条件緩和ないし移行期間の猶予を求めるだろう、(2)バイデンは11月にニュージーランで開催されるAPEC首脳会議でTPP復帰を明らかにすべきだ、(3)米国はTPPに参加し協定の強化に努めていくべきだ、環境は米国・メキシコ・カナダ(米墨加)協定に倣って協定規定の強化をすればよい、データの規定強化も可能だろう、労働の規定強化は困難だろうがベトナム、マレーシアとの二国間合意は可能かもしれないなどと述べる。
米国がTPP復帰を11月のAPECで打ち出すべきとの提案は、良い考えだ。それまでに目下難航している米下院でのインフラ法案(9月30日採決を10月末まで延期)と経済・社会福祉等対策法案の基本的問題が解決されていることを強く望みたい。
米国のTPP復帰の戦略的重要性を強調し過ぎることはない。それに代わる他策は見当たらない。バイデン政権は、公式発言は兎も角、部内ではTPPの重要性を十分理解、検討し、問題はタイミング等政策実施の問題であることが今の状況であることを切に願わずにはおれない。
9月16日の中国のTPP加盟申請から2週間余り、米国でのTPP復帰論は数少なく、心配になるほど低調だった。ところが、10月4日、USTRのタイが対中貿易政策再検討結果と対中交渉の開始につきCSISで講演し、それが非常に不評で、それへの批判をきっかけに、主要メディア等が大っぴらにTPP復帰論を主張するようになっている。
悪いことではない。しかし、 10月4日のタイのTPP関連発言は依然として慎重のままだった。どうも彼女は執行型のプロかもしれないが、戦略マインドを持ったプロなのかどうか、やや不安になる。