2024年11月23日(土)

都市vs地方 

2021年11月12日

人口という数ではなく、地域への「創造」を

 地方が真に求めなければならないのは、移り住む人の「数」ではなく、移り住んだ人に地域活性化をもたらす「ゲームチェンジャー」になってもらうことだ。

 企業がリモートワークを進めている背景の一つとして、リモートワークが採用活動のウリになりつつあることを挙げることができる。高い給与を払えない、または強いインセンティブをつけられない企業が優秀な人材や若者を採用するためには、「リモートワーク可」や「フルリモートワーク」といった条件が必要とされるようになっている。アフターコロナでもリモートワークはメインの働き方ではないとしても一定の割合で残るであろう。

 特に、フルリモートワークと相性の良い企業は、IT関連やベンチャー企業だろう。こうした企業に勤める人が地方に住むのであれば、その人たちを活躍できる場を設けることが地域活性化の近道となる。昔から、地域活性化には「よそもの、わかもの、ばかもの」を活用すべきとされてきたが、転職なき移住で地方に移住するIT人材やベンチャー企業に勤める人材は地域活性化にはまさにぴったりといえよう。

 ただし、「仕掛け」が重要である。キーワードは兼業・副業である。本業を持つ移住者が兼業・副業というトライアルを通じて移住先で活躍できる場を見出すことで、地域が活性化するとともに、移住者が地域に根差して定住してくれる可能性が高まるからだ。

 例えば、自治体にとって、住民票の提供といった住民サービスや職員の給与計算・福利厚生などの内部管理といった行政事務のデジタル化は大きな課題となっている。こうした業務に対し、転職なき移住で地元に住むIT関連企業の社員に副業・兼業でアドバイスを求めたり、アウトソーシングしたりすることで、お互いの必要性を確認しながら徐々にデジタル化を進めることができよう。

 また、「新たな挑戦がしたい」「さまざまな仕事がしてみたい」というニーズを持つ移住者に、兼業や副業でトライアルの場を与えることも重要だ。兼業や副業により移住先の企業などと実際に関わりをもつことで、移住者が移住先の企業に活躍の場を見つけて転職したり、移住先の企業との協業や助けを借りて起業することも可能になろう。

 行政のデジタル化の仕事も、地域での新たな事業も、副業・兼業から始まるのであれば地域にとって大きな負担とならない。こうした仕事を大都市のコンサルティング会社などに頼むと、膨大な費用がかかってしまう。それに対して、住み心地が良いと思って来てくれた人に副業・兼業を通じて「場」や「出会い」を与えることで、地域に変化を与える好機を得ることになる。


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