企業の歯車として働いているより、地域のために働いている方がやりがいを持てると思う人は多いだろう。そうした変化は、「ひとり」であってもできる。地域活性化とは、人をたくさん呼ぶことではなく、新たなビジネスや風を起こすことになりつつあるのだ。
行政は金よりも人を出そう
こうした動きのために、地方、特に自治体に期待したことは、お金を出すのではなく、汗をかくことだ。
移住者の能力と行政の課題をマッチングさせること、地域のために働いてみたい移住者と地域の有力企業の経営者の出会いの場を作ること、そんな黒子のような存在が求められている。
2000年代に、富士宮焼きそばを全国的に有名にさせた「2人のわたなべさん」がいた。静岡県富士宮市で食べられ続けてきた特徴的な焼きそばを、イベント企画や情報発信により10年間で約500億円もの経済効果を生み出すことに成功した。
その一人、渡邉英彦さん(18年12月、59歳で死去)がまず、この焼きそばを地域の宝と考え、仲間とともに「富士宮やきそば学会」を旗揚げした。市内の焼きそば店の地図を作成したり、大型の鉄板で大量の焼きそばを作るイベントを開催したりと、ユニークなPRを進めていた。
これを陰で支えたのが当時、市職員だった渡辺孝秀さんである。同じく郷土焼きそばがある自治体との連携や、他のエリアでのイベントの調整・仲介役を担った。全国のメディアからの取材対応にも尽力した。
移住者を受け入れる地域には、このような活躍を陰で支える動きが必要となってくる。面白いことや新たな取り組みを始めるためには何でもする。予算をかけるのではなく、人をつけることが大事なのだ。
地方は、移住者を受け入れれば地域が活性化すると思うのではなく、「移住者を使い切る」という姿勢で臨まなければならない。人を集めるだけから、集まった人から何か新しいことをする。これが本当の「地方創生」になるのではないだろうか。そこで生まれた地方の姿は決して東京の歯車ではなくなっている。