プーチンのロシア

2021年11月26日

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佐々木正明 (ささき・まさあき)

ジャーナリスト、大和大学社会学部教授

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業後、産経新聞社に入社、大阪社会部、モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長、運動部次長、社会部次長を歴任。特派員として五輪・パラリンピックやサッカーW杯を取材した。2021年春から現職。著書に『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)、『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)。

 マンモスの遺体から炭疽菌が発見されている。さらに、1980年に世界保健機関(WHO)が根絶宣言を出した天然痘ウイルスもどこかに眠っている恐れがある。専門家からは、過去に感染症ウイルスにかかって大量に死んだ動物の墓も地表に露出する恐れがあると警告されている。

 こうした古代の細菌が人類にどのような影響を及ぼすかについて研究分析がまたれるが、露メディア・スプートニクは「これらのウイルスは、感染力が非常に強く、死に至る危険性も高い恐れがある。これらの性質を研究し、対応するワクチンの開発を怠ったなら、人類の文明の存在が脅かされうる」とも報じている。

 気温上昇による永久凍土の融解は、ロシア国民の生命にかかわる問題となりうるのだ。

国内からも噴出するマイナス面の指摘

 さらに、永久凍土の中には大量の有機物が貯蔵されており、凍土が溶ければ、それまで凍結されていた有機物が分解されて、大気中にメタンや二酸化炭素などの温室効果ガスが放出されることも懸念されている。

 このまま根本的な対策をとらなければ、国際社会におけるロシアの立場はますます危うくなる。プーチン政権はパリ協定への批准で、はっきりとした針路をとるようになった。2019年にはマイナス面を強調する要人の発言が相次いだ。

 「ロシアは北極の永久凍土が溶けることで、毎年500億~1500億㍔(775億~2325億円)の損失をうんでいる」(露極東開発副大臣)

 「気候変動は農業をはじめとするロシアの主要産業発展のリスクを高める。さらに、永久凍土帯に住む人々の脅威となり、自然災害の発生件数も増加するため、ロシアにとってパリ協定への参加は重要だ」(メドベージェフ首相=当時)

 「ロシアの領の70%は高緯度地域にあり、一連の都市は永久凍士の上に建設されている。もし、永久凍士が溶け始めたら、我々にとってどのような影響が生じるのかを想像してほしい。極めて重大な影響だ。モスクワで今、温度に関する記録が次々と生まれているように、ある場所では気温が上昇し、一方で土地の砂漠化を引き起こす可能性がある」(プーチン大統領)

 そして今年、プーチン大統領が2060年までのCO2ゼロ目標を発表する半年前。国内で行われた国際環境会議で、コズロフ天然資源環境相が、ロシア経済にとっても最も大事な石油ガス採掘に関連して、永久凍土の劣化がどれほど損失をもたらすのかを発表した。

 「気候変動によって、北極圏にある道路や鉄道などのインフラ施設の4割超が変形している。原油や天然ガスの採掘にも影響を及ぼし、2050年までに損失は5兆㍔に達する恐れがある」

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