2024年4月17日(水)

ベストセラーで読むアメリカ

2021年12月5日

He won 13 consecutive home-run titles. He won 15 home-run titles in 16 years. He won two Triple Crowns. He walked at least 108 times for 16 straight seasons. His 868 career home runs is a world record.

「王は13年連続でホームラン王をとった。16年間で15回のホームラン王をとった。打撃部門の三冠王を2回とった。16シーズン連続で年間の四死球が108個以上だった。王の通算本塁打868は世界記録だ」

日本球界への敬意も

 本書は一方で、日本のプロ野球界での記録を、メジャーリーガーたちの記録と比較するのは難しい、ともいう。ただ、本書の筆者は、他の日本人メジャーリーガーのこれまでの活躍をたたえ、日本球界での王の記録に対し尊敬の念を忘れない。

We have seen many Japanese players, like Ichiro, Hideo Nomo, Hideki Matsui, and Yu Darvish, come over in the past 20 years and play at the same supreme level in the major leagues as they played in the Japanese Leagues. It’s not perfect math, of course. Some Japanese stars have not played well here. Also, Oh played in a different time for Japanese baseball. Still, baseball is baseball. And I must admit, as someone who has spent a lot of time learning about the Negro Leagues, I’m suspicious of anyone who dismisses other leagues or baseball styles as inferior.

「大リーグでは多くの日本人プレーヤーが登場してきた。イチローや野茂英雄、松井秀喜、ダルビッシュ有といった選手たちが、この20年の間にやってきて、日本のプロ野球で活躍したのと同じように、とても高いレベルでプレイしてきた。もちろん、だからといって日米の記録がまったく同じに扱えるというわけではない。日本のスター選手であっても、大リーグでいい成績を残せなかった例はいくつもある。しかも、王が日本のプロ野球で活躍した時期も違う。しかし、それでも野球は野球である。ニグロリーグについてたくさん調べてきた人間として、これは正直に言っておきたい。大リーグ以外のプロ野球リーグや野球の流儀を下にみる人のことを、わたしは信用しない」

 本書は、王の打撃成績などが当時の日本球界でも抜きんでていた点も指摘する。例えば、13年連続ホームラン王のうち8回は、2位の選手のホームラン数の倍以上の本数だった。これだけの選手であればベースボールの歴史のなかでも最高峰の選手たちのなかに入るはずだというのが本書の見立てだ。

名選手の逸話への検証も

 本書はベースボールに対する愛に満ちている。かつ、日本の選手や、人種差別で誕生したニグロリーグの選手たちへの目配りも怠らない。ランクインした選手一人ひとりの来歴なども丁寧に記し、野球の門外漢にはとても参考になる。大リーグだけが世界唯一のプロ野球だという偏見からも自由な良書だ。

 ベーブ・ルースについては伝説の「予告ホームラン」について、当時の新聞記事などを丹念に読み込み、その真偽を明らかにしている。「終わるまでは終わらない」(It ain’t over ’til it’s over.)など数多くの迷言で有名な元ヤンキースの名選手・監督のヨギ・ベラの発言についても、同じく当時の新聞報道をつぶさに調べ、本当に本人が言ったのかどうか調べた結果を明かしてくれる。蘊蓄(うんちく)の塊であり読んでいて楽しい。

 日本人の読者として気になるのは次の一点だ。大谷が大リーグで来年以降も活躍を続けたら何位にランクインするだろうか。本書の筆者なら公平な判断を期待できそうだ。近い将来、ランキングの更新をお願いしたい。

   
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