2024年7月16日(火)

ニュースから学ぶ人口学

2022年2月9日

 出生数の縮小は女性が生涯に生む子ども数(合計特殊出生率)の低下によるものだが、さらに近年の減少は15〜49歳の再生産年齢にある女性人口の規模縮小が輪をかけている点にも注目すべきだろう。

 戦後ベビーブーム期に生まれた団塊世代が20歳代半ばにさしかかった1972年に、15〜49歳の女性人口は3000万人を超え、それ以後、98年まで高水準にあった。少子化が始まった70年代半ばに生まれた世代が20歳代半ばに達した99年には2972万人へ減少し、2020年には2499万人と2500万人を下回った。

 出生率の低下によって始まった少子化は、05年に底を打ったものの、それによる母親世代の人口減少が、さらに年々の出生数を減少させる悪循環に陥っている。

少子化対策に本腰入れて15年超の効果は

 日本で合計特殊出生率が次世代の人口規模を維持することができる人口置換え水準を下回ったのは1974年である。その後2005年まで出生率は低下し続けてきた。

 1990年に前年の出生率が「丙午(ひのえうま)年」という特殊要因により過去最低であった1966年の1.58を下回ったことがわかると、「1.57ショック」と呼ばれる騒ぎとなった。86年までの国の将来人口推計(中位推計)では、いずれ出生率は2.0まで回復するとの楽観的な仮定を用いてきたが、91年の推計からはそこまで回復することはないと悲観的になった。「少子化」という新語が生まれ、政府の報告書でも用いられるようになった。

 少子化に対する国の政策対応は、94年12月に策定されたエンゼルプラン、緊急保育対策等5か年事業に始まり、少子化対策推進基本方針、新エンゼルプラントと続く。2003年7月施行の次世代育成支援対策推進法、同年9月施行の少子化社会対策基本法により法律に則った対応も始まった。

 それ以降は少子化対策会議決定、閣議決定、その他のプロジェクトやプランによって、結婚支援から妊娠・出産、仕事と子育ての両立、地域・社会における子育て、経済的支援など、さまざまな側面から子育てを支える対策が展開されてきた。19年10月からは子ども・子育て支援法の改正によって幼児教育・保育の無償化や低所得世帯に対する高等教育の修学支援新制度が始まった。

現金給付だけが解ではない

 現在、23年度の開設を目指して「こども家庭庁」の創設が国会で審議されている。「こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しする。そうしたこどもまんなか社会を目指すための新たな司令塔として機能させる」ものと説明されている。

 厚生労働省、文部科学省、内閣府などによる子どもと育児を支える機能を一体化させ、強化することは大いに期待されている。しかし一方では、幼稚園と義務教育に関わる事項が文科省に残ることや、新官庁の名称に「家庭」が入ることに違和感を訴える声もある。

 合計特殊出生率は、エンゼルプランの取り組みが始まって10年経過した05年の1.25から15年の1.45まで上昇して、一旦は回復軌道に乗ったかに見えた。しかし現実には再び下降に転じている。さらに20年、21年にはコロナ禍が追い討ちをかけている。さまざまな少子化対策の効果はあったのだろうか。


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