2021年回顧と2022年展望

2021年12月28日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活動。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)等多数。千葉大学客員准教授を兼務

 「2021年、中国の産業ロボット市場が一気に拡大しました。知り合いの企業は売上が一気に4倍に。ついに産業ロボット元年が到来したのではないでしょうか」

 中国のベンチャーキャピタリストからこんな話を聞いた。実際、ロボットはよく売れているようだ。

 中国工業の中心地である広東省、同省の統計局は2021年1月から11月の産業ロボット市場が前年同期比60.1%増という高成長を記録したことを発表している。導入が進んでいるだけではない。中国国内のロボット産業をリードする能力があると省政府より認められた「省級ロボット中心企業」の認定を受けた企業は100社を超えるなど、メーカーの数も増え続けている。中国経済紙・21世紀経済報道は「機器換人」(ロボットが人間を代替する)はテスト導入の段階を終え、普及段階に入りつつあると評している。

「世界の工場」とも呼ばれている中国の製造業も人手不足に襲われつつある(AP/アフロ)

 経済規模のみならず技術力の分野でも目覚ましい成長を続ける中国が、産業ロボットの分野でも飛躍しようとしている……と見れば、中国にとってポジティブなニュースと受け止められるが、「製造業はなぜロボット導入を急ぐのか?」との背景に目を向ければ、けして明るいニュースとだけ見ることは難しい。

「世界の工場」の人手にも陰りが

 中国の経済成長を支えたのは「世界の工場」というポジションだ。人口大国の中国には無限の労働力があるとまで言われた。その労働力を活用すれば、安価に製品を量産することができる。そうした考えから外資系企業が大挙して中国に進出し、工場を構えた。

 当初は外資系企業の下請け組み立て工場やサプライヤーだった中国企業も、次第に資本力と技術力を身につけていき、今では世界的企業も数多く生まれている。

 工場が増え労働需要が高まれば賃金が上昇するのが道理だが、中国では働き手の数がなにせ膨大にいるだけになかなか賃金が上がらない。広東省を例に出せば、広州市や深圳市の周辺の労働力が払底しても、湖南省や広西チワン族自治区という内陸の後背地からの出稼ぎ労働者が多く、労働力には困らなかった。

 しかし、2010年代後半に入ると、ついに中国でも労働力不足が表面化してきた。経済成長に伴い全体の雇用が増えたこと、そして中西部の経済成長が加速しわざわざ遠隔地まで出かける出稼ぎ労働者が減ったことがあげられる。

 また、若い世代の価値観の変化も大きい。かつての労働者はいわゆる3Kの仕事もいとわなかったが、今20~30代の若者は出稼ぎ労働者であっても、きつい仕事を敬遠する傾向が強い。消費の成長に伴いサービス業での雇用が増えていることもあって、製造業は労働力の確保が困難になってきた。

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