2024年7月16日(火)

#財政危機と闘います

2022年2月21日

パンデミック後に回復する出生数

 ところで、歴史上、今般のコロナ禍のようなパンデミックの後には、出生数が回復する傾向がみられてきた。

 図2はスペイン風邪が日本の出生数と死亡数に与えた影響を見たグラフである。

 図2によれば、スペイン風邪の流行当初は死亡者数が大きく増えたことに反応して出生数が減少したものの(出生抑制)、1920年には出生数は大きく回復した(挽回出生)ことが分かる。

 同じく、図3はアジア風邪と香港風邪の影響を示したグラフとなる。

 図3によれば、規模はスペイン風邪に比べて小さいものの、アジア風邪流行時にはやはり出生抑制と挽回出生が見られた。しかし、香港風邪流行時には死亡者数が目に見えて増えなかったこともあってか、出生抑制と挽回出生は見られない。

 まとめると、未知のウィルスが社会に蔓延すると、死亡者数が多かったり、妊娠にいかなる影響を与えるのかが不明な場合、いったん妊娠を抑制し、ある程度の情報が出揃ってから、挽回出生に移るものと考えられる。

コロナで抑制された2万5000人の出生

 では、コロナによる出生抑制によって、コロナがなかりせば誕生していたはずの命はどの程度失われたもしくは延期されたのだろうか?

 ここでは、一定の仮定のもと、日本の出生数の実績値と長期間にわたって示される傾向的な動きであるトレンドや所得、婚姻率といったその他諸変数から理論的に求まる推計値とを比較することにより2020年と21年9月までに抑制された出生数を求めたところ、それぞれ2.5万人、9000人と推計された(図4、図5)。

2021年6月頃から本格化し始めた挽回出生

 これまでのパンデミック下の出生動向に関する経験に照らし合わせてみると、現在、コロナにより落ち込みを見せている日本の出生数は、今後どのように推移すると考えられるのだろうか? 挽回出生は起こるのか?


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