2024年7月16日(火)

#財政危機と闘います

2022年2月21日

 図6は、日本の実際の出生数と、コロナが起きなかった場合を想定した出生数の推移を比較することで、コロナ禍からどのように出生数が推移していくのかを見たものである。この図によれば、出生数について、速報値よりは精度の高いデータである概数値のある2021年9月までを通してみれば、21年1月、2月と落ち込みが大きかったものの(1月▼1.1万人、2月▼1.2万人)、それ以降は概ね回復傾向にあり、6月には理論値を上回って以降は実績値が理論値を上回る幅が加速して推移し、9月現在では6000人上回っていることが分かる。

 こうした出生数の動きからは、21年6月頃には、挽回出生が本格化し始めたのではないかと推測できる。今後も同様の傾向が続くとすれば、コロナの出生数への影響は限定的であり、更なる出生数の大きな落ち込みは回避されると考えられる。

社会・経済活動の正常化を断行すべき

 ただし、出生の挽回行動が持続的なものとなるためには、まず、日本の場合、婚姻が出生の大前提としてあること、そして婚姻した後は出産・育児のため安定した雇用・所得環境が必須であることに留意する必要がある。

 つまり、コロナ対策として盛んに強調される「感染対策のための人と人との接触機会の削減」「さまざまなイベントの中止要請」などは若者から婚姻に至る前段階としての出会いの場を奪い、さらには2人の関係性を深めるイベントを制限する愚策にほかならない。一刻も早く全廃するとともに、経済活動の正常化を早急に行うことで若者の雇用・所得環境を維持し、生活を安定させることが必要である。

 そしてコロナ病床の確保・コロナ患者の優先入院などによる周産期医療への悪影響を除去することなどで、結婚や出産を考える世代、あるいは出産にまさに直面しているカップルが抱く不安を解消しつつ、安心して交際・結婚・妊娠・出産ができる環境整備に取り組んでいくことが喫緊の課題であると言えるだろう。

トロッコ問題に向き合うべき

 コロナ禍のニッポンでも実は「高齢者を守るために若者や子ども達、そして生まれるはずの生命を犠牲にするのか?」「若者や子ども達、そして生まれるはずの生命を守るために高齢者を犠牲にするのか?」というトロッコ問題に直面しているにもかかわらず、国会でもメディアでも明示的に議論された形跡がない。

 言うまでもなく「若者や子ども達、そして生まれるはずの生命」は国の礎である。一方、高齢者は今の日本を築いた功労者である。

 読者のみなさんはこのトロッコ問題への解はどのように考えるだろうか?

 
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