2024年4月27日(土)

INTELLIGENCE MIND

2022年2月24日

世界を震撼させる
軍の工作活動

 人民解放軍では総参謀部第2部が軍事情報を収集しており、こちらも海外に人員を送り込んでいる。2012年5月、外交官の身分に偽装し、日本の農林水産省の機密文書を不正に入手していた李春光(りしゅんこう)は、この第2部の所属であったとされる。

 また19年11月、豪州に亡命を申請した王立強(おうりつきょう)は、元々、安徽財経大学で油彩画を専攻する学生であったが、総参謀部にリクルートされ、香港で民主派学生の監視・洗脳役を担うことになる。さらにその後は、韓国のパスポートを携えて台湾に送り込まれることになっていたが、スパイの任務に嫌気がさして亡命したとされる。

 総参謀部第3部は技術偵察部と称され、通信傍受や電子技術による情報収集を担当している。最近は各国に対するサイバー攻撃やハッキングを行って情報を収集することに注力しており、第3部の第2局(61398部隊)が米国、第3局(61785部隊)が台湾、第4局(61419部隊)が日韓をターゲットとしており、日々のサイバー攻撃に余念がない。

 15年には米中間でお互いにサイバー攻撃をしない旨の合意がなされたにもかかわらず、ほぼすべての米国IT企業が中国のものと見られるサイバー攻撃を受け、その被害総額は6兆㌦にも及んだという。日本でもサイバー攻撃がある度に話題に上がる中国系ハッカー集団「Tick」の背後にはこの第3部が控えているとされ、過去、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や三菱電機など、多くの企業が被害を受けた。

 さらに人民解放軍は、17万人を超える戦略支援部隊を有しており、そのうちの約3万人がネットワークシステム部の人員として、サイバー分野におけるさまざまな活動を行っている。この部は「APT40」と呼ばれるサイバー攻撃集団と連携して、サイバー攻撃やフェイクニュースの流布などを行っており、19年の豪州総選挙や20年の台湾総統選挙に介入したという。

 前者においては連邦議会に対するサイバー攻撃があり、後者においては「蔡英文・総統候補の博士号取得は嘘」とする偽情報が拡散されたのである。

 昨年9月、フランス国防省戦略研究所(IRSEM)は「中国の影響力工作──マキャベリの瞬間」と題した654頁にも及ぶ報告書を発表した。サイバー空間における中国の影響力工作がロシアに匹敵するようになり、マキャベリに倣って「愛されるよりも恐れられる方を選択している」と警鐘を鳴らした。

Wedge3月号では、以下の​特集「魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない」を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンでお買い求めいただけます。
■魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない
PART1 魚が減った本当の理由 日本の漁業 こうすれば復活できる
片野 歩(水産会社社員)​
 Column 1  その通説は正しいのか? 漁業のギモンにお答えします
PART2 ノルウェーだって苦しかった 資源管理成功で水産大国に
ヨハン・クアルハイム(ノルウェー水産物審議会(NSC) 日本・韓国ディレクター)
 Column 2   原始時代から変わらぬ日本の釣り 科学的なルール作りを 
茂木陽一(プロ釣り師)
PART3 70年ぶりに改正された漁業法 水産改革を骨抜きにするな 編集部
PART4 「海は俺たちのもの」 漁師の本音と資源管理という難題
鈴木智彦(フリーライター)
PART5 行き詰まる魚の多国間管理 日本は襟元正して〝旗振り役〟を
真田康弘(早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授)
PART6 「もったいない」を好機に変え、日本の魚食文化を守れ!
島村菜津(ノンフィクション作家)
 Column 3  YouTuber『魚屋の森さん』が挑む水産業のファンづくり 
森 朝奈(寿商店 常務取締役)
 Opinion  この改革、本気でやるしかない  編集部

   
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Wedge 2022年3月号より
魚も漁師も消えゆく日本
魚も漁師も消えゆく日本

四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか


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