知られざる高専の世界

2022年5月2日

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堀川晃菜 ( ほりかわ・あきな)

サイエンスライター・科学コミュニケーター

東京工業大学大学院生命理工学研究科修了。農薬・種苗メーカーでの勤務を経て、日本科学未来館の科学コミュニケーター。その後、WEBメディアの編集・記者を務め、現在はフリーランス。著書に『バイオ技術者・研究者になるには』(ぺりかん社)。

佐世保工業高等専門学校(長崎県)

 スナノミ症をご存じだろうか。「スナノミ」というノミが人や動物の足に寄生する感染症だ。日本ではあまり馴染みのない疾患だが、ケニアには推定で約200万人の罹患者がいる。罹患すると痛みや患部の変形で歩行困難になり、最悪の場合は2次感染により死に至る。

 このスナノミ症に〝泡〟で対抗策を打ち出したのが、佐世保工業高等専門学校の「ファインバブルLab.」だ。メンバーは機械工学科3年生の森田羽南さん、中島明さん、眞﨑香帆さん、井手公子さんの4人。彼女たちはなぜスナノミ症に着目し、なぜ泡で立ち向かうことにしたのか。

高専女子学生を対象とした「高専GCON2021」で視聴者賞を受賞した佐世保高専のメンバー(写真=佐世保高専提供)

 「高専GCONに出場するため、当初は海洋プラスチック汚染の問題に対してファインバブルを使うことを考えた」と森田さんは話す。高専GCONとは、2021年度に初開催された高専の女子学生を対象とした新たなコンテストで、持続可能な開発目標(SDGs)の視点で社会課題の解決に向けた技術開発を競うというもの。一方、ファインバブルとは直径0.1㍉メートル未満の微細な泡のことで、その技術で日本は世界をリードしている。佐世保高専でも複数の教員がファインバブルの研究を進めている。

 ファインバブルには通常の泡にはない、いくつかの特徴がある。その一つが泡と水の界面に生じる作用だ。例えば水中では泡の表面がマイナスに帯電するため、プラスに帯電する物体を吸着する作用が知られている。彼女たちは、この作用を使って海洋中のマイクロプラスチックの回収を検討していた。ところが、その方向性をガラリと変える出来事があった。

 ある日、このプロジェクトの指導教官で、電気電子工学科の猪原武士准教授はたまたま見つけた国際協力機構(JICA)のプレスリリースを手にしていた。そこには、スナノミ症の解決に向けたケニアでの取り組みが紹介されていた。初めて知るその感染症にショックを受けた彼女たちは、すぐさま行動を開始。JICAのとの協力事業を進める長崎大学の熱帯医学研究所にメールを送り、取材を申し込んだ。 

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