IRの基本的なコンセプトはとにかく「インテグレーション」つまり、「統合」である。ホテルを中心に多くの機能が統合されている。理由は単純だ。施設内で多くが完結し、利用者に連泊させるだけでなく、料飲も施設内で完結するようにするためだ。こうした設計により、家族向けの高額な室料を複数泊売り上げることに加えて、料飲の売り上げも1日3食かける複数日かける複数の人数という掛け算になる。
つまり「統合」によって売り上げが掛け算で飛躍的に大きくなるというわけだ。1泊ではなく3泊、1人でなく家族5人、そしてこれに1日3食が掛け算で加わる。これがIRの基本モデルである。これは都市型であろうが、リゾート型であろうが変わらない。ラスベガスでも、カリブやメキシコでも、あるいはバリでもタヒチでも同じである。
ビジネスモデルの基本は同じだが、都市型とリゾート型には違いがある。それは、リゾートの場合は美しい海岸を利用した保養やスポーツなどで「滞在」させる一方で、都市型の場合は「カルチャー」や「エンターテインメント」の魅力で「滞在」を引き出すという違いである。
重要となる日本らしい「コンセプト」
リゾート型の場合も、プライベートビーチを整備するだけでは足りない。さまざまなスポーツのアクティビティを用意、またプールやジムなどの設備もハード、ソフト両面で手抜きは許されない。とにかく、施設内で全てが完結するように、そして最低でも2日から3日の滞在期間、宿泊客がその施設内のアクティビティを楽しみ、満足するような設備とプログラムを用意しなくてはならない。
そこで重要になってくるのが「コンセプト」である。日本に憧れてやってくる訪日外国人の中には、日本の自然に惚れ込んでやって来る層がある。そうした層を中核のターゲットとして、リゾート型についても、日本の自然観を反映した施設全体を貫くコンセプトを徹底すべきだ。例えば黒潮と太平洋とか、火山と地質のダイナミズム、自然林と四季の変化といった具合である。
一方で、都市型の場合はこのコンセプトというのが、より重要になってくる。自然環境ではなく、都市型IRの場合は「域内の人工的な仕掛け」で2日から3日は決して覚めることのない「夢」を宿泊客に見せなくてはならない。例えば江戸文化、浪花のカルチャー、食文化、アニメや漫画、歌舞伎や相撲といった具合である。それも、「紛(まが)い物」ではなく、相当に力の入ったショーや展示を絡ませて、宿泊空間や3食の料飲サービスに至るまで「夢」を徹底するのだ。
反対に、コンセプトとその実施という点で成功できれば、つまり日本というカルチャーの持つ「ソフトパワー」を施設の魅力として徹底し、明らかに滞在期間を通じて「夢」を与えることができれば、日本のIRはラスベガスもカリブも敵わない強さを持つ可能性がある。
ライバルとしては、ディズニーのテーマパークに照準を合わせてもいい。ディズニーの施設にはカジノはないが、あれは立派なIRであり、そして世界最高の成功例である。
しかしながら、ディズニーを例外とすると、世界の多くのIRにはカジノが併設されている。そして、今回の日本のプロジェクトも、規制緩和を行なってカジノを認可するところに新しい意味が加えられている。