2024年11月25日(月)

バイデンのアメリカ

2022年5月9日

 このため、ゼレンスキー大統領はロシア軍侵攻開始直後、急遽、NATO加盟に意欲を示したものの、その後、ロシア側が「加盟を断念しない限り、停戦交渉には一切応じない」と強硬姿勢を示したことから方針転換した。最近では、同大統領はNATOではなく、非軍事組織である欧州連合(EU)加盟の意向を表明、ロシア側もこの点に関しては、譲歩の余地を見せていると伝えられる。

 一方、バイデン大統領も、ロシア軍侵攻当初から、「米軍投入せず」を言明、その後も、軍事物資、経済支援だけにとどめているのは、ひとえにウクライナが「友好国」ではあっても「同盟国」ではないことによる。米国はじめNATO諸国は、「1加盟国に対する攻撃は全加盟国に対する攻撃とみなす」として共同対処をうたっているが、ウクライナの場合はこの限りではないことは今さら言うまでもないだろう。

いまだに残る鳩山政権の軽薄な日米同盟論

 しかし、このことはわが国にとっても、他人事では済まされない。 

 2009年当時、鳩山由紀夫民主党政権は、日米関係と日中関係を対等視する「等距離外交」基本路線を打ち出した。言い換えれば、「同盟関係」にある日米関係と「友好関係」にしか過ぎない日中関係を同次元で扱うといういかにも軽佻浮薄な考え方であり、それだけ日米同盟軽視を意味した。

 まさに、前掲の某紙論調に寄り添った主張だった。当時の小沢一郎同党幹事長も、日米中3カ国の関係を日米、日中の二辺からなる「二等辺三角形」と評してはばからなかった。

 これに対し、米国側では党派を超え、対日関係を対中関係並みに等閑視したことは今日に至るまで一度もなく、つねに「日米関係」を「最重要の関係」と位置付けてきた。

 実際に、筆者が新聞社のワシントン特派員だった当時、国防総省の当局者たちが日本人記者団向けに事あるごとに、「日米同盟関係」と「米中友好関係」の歴然たる違いを念押ししていたことが思い出される。

 今あえて、鳩山政権当時の外交姿勢に触れざるを得ないのは、「過去は過去」と割り切って済まされる問題では決してないからだ。わが国では、親中派を自認する勢力が、いつ何時、再び息を吹き返し、かつてのような空理空論を振りかざさないともかぎらない。

 現在、インド太平洋方面においても、ロシアのウクライナ侵攻以来、同じ専制国家である中国による台湾武力併合への懸念が高まっている。そして、もし、台湾危機が発生した場合、それは即日本有事であり、他人事ではいられなくなる。

 その理由は明らかだ。

 第一に、米軍が何らかのかたちで軍事介入する可能性が高く、その場合、在日米軍基地からの部隊出動が十分考えられるからであり、第二に、日本最西端の与那国島と台湾は100キロメートル程度の至近距離にあり、尖閣諸島を含む南西諸島が戦域となる。第三に、中東原油に依存するわが国のシーレーン(海上輸送路)が危殆(きたい)に瀕することになる。さらに米国と同盟関係にある以上、台湾を含む自由主義圏の平和と安定への中国の挑戦を日本だけが傍観視することは許されないからだ。

 まさに「日米同盟」の真価が問われることになる。


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