2024年11月25日(月)

バイデンのアメリカ

2022年5月9日

過去に見せた日米双方の声明

 台湾情勢と日米との関わりについては、去る96年4月16日のクリントン大統領の訪日と橋本龍太郎首相(いずれも当時)との首脳会談が思い出される。筆者もワシントンから大統領の同行取材したが、前年95年7月21日から96年3月23日まで続いた「第三次台湾危機」の直後というタイミングで行われだけに、会談では「日米安保の再定義」が主要議題となった。

 そして会談終了後、発表された共同声明では、まず「(台湾海峡など)アジア太平洋地域において不安定性および不確実性が存在するとの情勢認識の下で、日米安保体制が地域の安定と繁栄の基礎となることを再確認する」とうたった上で、具体的に①日米安保条約に基づいた米国の抑止力が日本の安全保障の基礎となる、②米国の地域に対するコミットメントを守るため、在日米軍をはじめとする10万人規模の前方展開戦力を維持する、③日米同盟関係の信頼性向上のため、両国は国際情勢についての情報、意見交換を強化していく――などの内容が盛り込まれた。

 さらに、クリントン大統領は共同声明発表後、アジア太平洋に対する米軍コミットメントの象徴的存在である横須賀基地を訪れ、空母「インディペンデンス」の乗組員たちを激励する演説を行っている。

 このこと自体、緊張が続く台湾情勢と日米安保がまさに密接な関係となっていることを如実に物語るものだったと言えよう。

 米国はさらに今世紀に入り、オバマ政権の下で、有事の場合に、米国の共同対処を義務付ける日米安保条約第5条が尖閣諸島にも適用されることを公式に宣言した。バイデン氏も、2020大統領選で当選後、菅義偉首相(当時)との電話会談で、第5条適用を明言した。

北朝鮮の核攻撃を自国だけでは防げない

 日本にとって「台湾危機」以上に、より切迫した課題が北朝鮮の核問題にほかならない。

 北朝鮮の正確な核弾頭保有数は明らかではないが、権威あるスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)2021年度版レポートによると、すでに「40~50発」に達しているとされる。これに対し、核弾頭を発射するミサイル保有数は不明だ。しかし、これまでの報道でも、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、中距離弾道ミサイル(IRBM)発射実験の成功が確認されており、日本はもちろん、米領グアム島、ハワイ諸島、米本土を射程に収めていることは間違いない。

 これに対し、わが国は米国との連携の下に、飛来するミサイルを迎撃するための「ミサイル防衛」(MD)計画に着手、これまでに、「イージスシステム」搭載艦2隻、地上では地対空誘導弾パトリオット「PAC3」を配備している。

 しかし、北朝鮮はその後、発射の事前探知が困難な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)のほか、列車移動式のミサイル実験を成功させており、もし近い将来、北朝鮮が核攻撃の挙に出た場合、わが国はほとんど無防備に近い状態にさらされたままとなる。まさに切迫した重大脅威といえる。


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