だからこそ必要な「日米安保体制」
ただ、そうした現状にもかかわらず、今のところ、日本の安全が確保され、国民の間でもさほど動揺や焦りが見られないのは、ひとえに日米安保体制の下の「核抑止力」を暗黙裡に信じているからだろう。
この点は、北朝鮮側も、十分理解しているとみて間違いない。つまり、何らかの理由で日本に向け核ミサイルを発射した場合、ただちに米側から何十倍に及ぶ報復を受け、国全体が破滅に追いやられかねないことを恐れていると想像される。
日本の安全は今まさに、日米安保体制抜きにはあり得ないことが自明の理となった。もし政府が、かつての民主党政権、そして一部進歩的メディアが提唱したしたような現実離れした平和論や「日米安保条約破棄」を国策として採用したまま今日に至っていたとした場合、わが国は、台湾、朝鮮半島を含むインド太平洋地域において、欧州のウクライナと同様の悲惨な状況に立たされていたことは否定できない。
その意味でも、岸田首相は今回、バイデン大統領との直接会談を機に、26年前のクリントン大統領訪日の象徴的意味を振り返ると同時に、改めて国民向けに「日米安保体制」の意義と重要性を、声を大にアピールする絶好のチャンスでもある。