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#財政危機と闘います

2022年5月10日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 資産所得倍増では、資産を持たない国民は取り残されてしまうが、そのあたりはどう考えているのか、現時点でははっきりしない。厚生労働省「国民生活基礎調査」では19年時点で、預貯金はもちろん株式や投資信託などを持たない貯蓄ゼロ世帯は全世帯の13.4%に達している。特に、母子世帯は31.8%がゼロ貯蓄であり、ほぼ3世帯に1世帯となっている。

 しかも、日本では金融資産総額の6割は60歳以上の高齢者が保有している現状に鑑みれば、資産所得倍増計画は世代間格差も拡大させるだろう。つまり、持てる高齢者を持たざる若者が支える構図が一層強化されるのだ。

 そうした資産を持たない労働者や若者への分配重視がいつの間にか放棄され、格差を拡大させる株式投資による資産所得の倍増へと舵を切ったのだから驚く他ない。株式投資にはリスクがつきものであるため、所得や資産が大きいほど、リスクテイクが容易になり、より多くの利子や配当、キャピタルゲインが得られ、格差が拡大するのだ。

 格差是正を旗印の一つに掲げる岸田内閣が一方で格差を拡大させる政策を追求するとは政策に一貫性が欠けるとの批判は免れないだろう。

「聞く力」ではなく、「聞かせる力」を

 結局、岸田内閣が進める政策が、株式市場はもちろん、国民からも今一つ支持を得られないのは、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の具体像がいまだに明確にならないことに加え、「新しい資本主義」を実現するための目玉政策がコロコロ変わり、しかも首尾一貫していない分かりにくさに原因がある。

 国民からの批判や側近の場当たり的なアドバイスにばかり「聞く力」を発揮して内閣が目指す方向を二転三転させるのではなく、「岸田ノート」に記されているだろう自らが実現したいと思っている日本の姿を国民に説明し、そのために必要な施策を国民に提示し説得する「聞かせる力」が今こそ岸田首相に必要だと思うが、読者はいかに考えるだろうか。

  
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