2022年12月7日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年5月27日

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 100年前、英国が北アイルランドを分離してアイルランドの独立を認めた時、北アイルランドの境界はプロテスタント(ユニオニスト)が多数になるように線引きされたはずである。その北アイルランドで、5月5日の北アイルランド議会選挙において、ナショナリスト(アイルランドとの統合を目指す)のシン・フェインが初めて最大の政党となり、自治政府の首席大臣の地位を手にすることとなった。歴史的・画期的なことである。

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 計90議席が争われた選挙結果は、シン・フェインが27議席、ユニオニスト(連合王国への帰属維持)の民主統一党(DUP)が25議席、いずれにも属さない同盟党(Alliance)が17議席、などとなっている。

 シン・フェインが勝利と言っても、その議席数は前回と同じであり、ユニオニストの三党の合計得票数はナショナリストのそれを1万7000票上回った。DUPの票が割れ、一部はAllianceにも流出したようであるが、ナショナリストとユニオニストの対立の政治を嫌気する票がいずれのコミュニティーに属するかを規定しないAllianceに集まり、同党を第三党に躍進させたことが注目されよう。

 今回の選挙でアイルランドとの統一が近付いたというわけではない。最近のある世論調査によれば、英国にとどまることを支持する者:50%、アイルランドとの統一を支持する者:37%、分からない:13%であるが、いずれにせよ、住民投票の実施の如何は英国政府の判断である。

 シン・フェインはアイルランドとの統一の問題は封印し、生活水準の問題に焦点を当てて選挙戦を戦った由であるが、勝利を受けて、党首のマクドナルドは5年以内には「秩序立った、民主的で完全に平和的な形での」住民投票の実現を望みたいと言っている。しかし、性急な言動は避けるべきことである。

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